企画業務型裁量労働制の対象事業場

企画業務型裁量労働制の対象事業場とは、次に該当する事業場です。

(1)本社・本店

(2)本社・本以外であって次に該当する事業場

イ 事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場。
ロ 本社・本店の具体的な指示を受けることなく独自に、事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等である事業場。

企画業務型裁量労働制の対象業務

企画業務型裁量労働制が適用できるのは、「対象となる業務が存在する事業場」です。
それでは、どのような業務が対象となるのでしょうか?
それは次の要件を満たす業務です。

イ 事業の運営に関する事項についての業務であること
ロ  企画、立案、調査及び分析の業務であること
ハ  当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること
ニ  当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

企画業務型裁量労働制の対象労働者

企画業務型裁量労働制の適用対象となるのは、対象事業場で、対象業務についている労働者です。

対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有することが要件になります。
このため、対象労働者となり得る者の範囲を特定するために必要な職務経験年数、職能資格等の具体的な基準を明らかにすることが必要です。

ここで注意しなくてはならないのは、「対象業務に常態として従事していることが原則」ということです。

つまり、企画業務と事務作業の両方を担当しており、事務業務は企画業務とはそれぞれの業務内容がまったく別の業務という場合は、裁量労働の対象にならなりません。

ただ、対象業務に付随する作業を行うことがあるという場合は、問題ないと思われます。

対象労働者の同意

企画業務型裁量労働制を適用する個々の労働者の同意が必要です。

同意にあたっては、対象業務の内容を始めとする決議の内容等当該事業場における企画業務型裁量労働制の制度の概要、企画業務型裁量労働制の適用を受けることに同意した場合に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容並びに同意しなかった場合の配置及び処遇について、使用者が労働者に対し明示して当該労働者の同意を得ることが適当です。

また、この同意については、書面によること等その手続に加えて、対象従業員から当該同意を撤回することを認めることとする場合にはその要件及び手続を具体的に定めることが適当です。

なお、使用者は、企画業務型裁量労働制の適用を受けることに同意しなかった場合の配置及び処遇は、同意をしなかった労働者をそのことを理由として不利益に取り扱うものであってはなりません。

企画業務型裁量労働制におけるみなし労働時間

これは「対象業務に従事する前号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間」を1日単位で定めなくてはなりません。

では具体的にどうするか?

これは完全に労使に委ねられています。

決め方は、全社一律である必要はなく、職種、資格等級、役職ごと、あるいは時期ごとに定めることも可能です。

対象業務の内容を十分検討するとともに、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容を十分理解した上で、適切な水準のものとなるように決めることが求められています。

健康及び福祉の確保措置

使用者は、対象労働者の健康および福祉を確保するため、以下の措置を講ずる必要があります。

①対象労働者の勤務状況を把握する方法を具体的に定める
②把握した勤務状況に応じ、どういう状況の対象労働者に対しいかなる健康・福祉確保措置をどのように講ずるかを明確にする

この「勤務状況の把握」については、通常の実労働時間管理と同様の管理までは求められていません。
出退勤時刻の把握などによって、労働者がいかなる時間帯に、どのぐらいの時間在社していたかを把握するということです。

また、健康・福祉確保措置の例として、以下のようなものが上げられます。

①代償休日・特別休暇の付与
②特別の健康診断の実施
③年休の連続取得を含めた取得促進
④心と体の健康問題相談窓口の設置
⑤必要に応じた配置転換
⑥健康障害防止のための必要に応じた産業医等による助言・指導、本人への保健指導

また、以下のことも決めておくことが望ましいとされています。

・勤務状況の把握に合わせて健康状態の把握(本人申告・上司によるヒアリング等) を行う
・勤務状況および健康状態に応じて、制度の適用除外等の見直しを行う
・自己啓発のための特別休暇の付与等、能力開発のための措置を講じる

苦情処理

対象労働者からの苦情の処理に関する措置の具体的内容を決めなくてはなりません。

申し出窓口・担当者、取り扱う苦情の範囲、処理手順・方法などを明確にします。

労使委員会決議

企画業務型裁量労働制を導入する場合、賃金、労働時間などの労働条件に関する事項を調査・審議し、事業主に対し意見を述べることを目的とする委員会として、次の要件を満たす労使委員会を設置しなければなりません。

①委員の半数が、過半数労組または過半数代表者に任期を定めて指名されていること(労働者側委員は、管理監督者以外の者であること)
②議事録の作成、保存、周知がなされていること(議事録は3年間保存)
③「運営規程」が定められていること、策定にあたって、労使委員会の同意を得ていること
④委員であること、委員になろうとしたこと、委員として正当な行為をしたことを理由として、不利益な取り扱いをしないようにしなければならない

運営規程に盛り込むべき事項

①招集に関する事項
・定例委員会
・臨時委員会
②定足数に関する事項
・全委員に係る定足数
・労使各側ごとの定足数
③議事に関する事項
・議長の選出
・決議の方法
④その他委員会の運営に関する事項
・使用者が委員会に開示すべき情報の範囲、開示手続き、開示が行われる委員会の開催時期
・労働組合やその他の労使協議機関がある場合、労使委員会における調査審議事項の範囲
⑤労使委員会が労使協定に代えて決議を行うことができる規程の範囲

労使委員会決議

出席委員の5分の4以上の多数決により、次に掲げる事項について決議をし、所定の様式により、所轄の労基署に届け出なければなりません。

①対象業務
②対象者の範囲
③みなし時間
④健康福祉確保措置
⑤苦情処理措置
⑥同意原則・不同意の場合の不利益取り扱いの禁止
⑦決議の有効期間(3年以内とすることが望ましいとしています)
⑧記録の保存(決議の有効期間中およびその満了後3年間)

また、決議に含めることが望ましいと指針で定めているものに、次の事項があります。

⑨健康福祉確保措置を講じる前提として、会社が勤務状況と合わせて健康状態を把握すること
⑩勤務状況、健康状態に応じ、制度適用について必要な見直しを行うこと
⑪自己啓発特別休暇等、能力開発促進措置を講じること
⑫制度概要、同意した場合の評価制度・賃金制度、不同意の場合の配置処遇について明示したうえ
で、同意を得ることとすること
⑬同意の手続き(書面によること等)、撤回を認める場合の具体的な要件・手続きに関すること
⑭委員の半数以上から、決議の変更等のための委員会開催の申し出があった場合の、中途での決議
変更のための調査・審議に関すること
⑮評価制度・賃金制度を変更する場合の労使委員会への事前説明

定期報告

使用者は、決議が行われた日から起算して、6ヶ月以内ごとに1回、所定様式により所轄労働基準監督署へ定期報告をしなくてはなりません。

報告は、対象となる業務の種類ごとに、次の事項について行います。

・対象となる労働者の労働時間の状況
・対象となる労働者の健康および福祉を確保する措置の実施状況

適切な労働時間管理のために

今回は裁量労働制のひとつ、企画業務型裁量労働制にあらましについて解説させていただきました。

これからの働き方をを考えていくうえで、労働時間制度のあり方は重要なポイントになります。ヒューマンキャピタルでは、丁寧なヒアリングで現状を診断し、会社の実情にフィットした労働時間管理制度をご提案します。労働時間管理でお悩みの方はぜひご相談ください。