試用期間後の本採用拒否~新卒の場合と中途採用の場合

試用期間と就業規則の話を続けます。

試用期間とは、その人を正式採用できるかどうかを最終的に判断する期間ですが、これは新卒と即戦力性が期待され高待遇で採用された中途採用とでは異なってきます。
(なお、同じ中途採用でも、第二新卒など、その人のキャリアより素養などを重視して採用された人は、新卒と同様に考えていいでしょう)

新卒の場合は、「社員として適格か」というより、「正式採用できない不適格要因はないか」を判定すると考えるのが適切です。
実際、「社員として適格か」ということを、数カ月で判定でき切るものではありませんし、そもそも新卒入社の場合、社員として適格になるように教育することが前提でしょう。

もっとも最近は、IT系人材を中心に、新卒にも即戦力性を求める採用も行われるようになっているので、このあたりの判断基準も変わっていくかもしれませんが。

一方、即戦力性を期待して、高待遇で採用した中途採用の場合は、入社してそれほど間をおかずに担当職務を割り当てるでしょうし、成果も求めるでしょう。
したがって、試用期間中にその人の能力やパフォーマンスを判定することになります。

就業規則の記載そのものは両者を特に区別することなく「社員として適格か」という旨の記載をするのが一般的ですが、内容は異なるということですね。

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試用期間の長さ

ではこの試用期間の長さはどのぐらいにすべきでしょうか?

まず、「社員としての適格性を判断できるまでの期間とする」というような、期限がはっきりしない定めにすることは許されていません。
就業規則に具体的な期間を定めなくてはならないのです。

またその長さについても、不当に長いものは無効とされています。
一般的には、3カ月~6カ月が多いですね。
後述の延長期間と合わせて1年までとするのが常識的な線でしょう。

試用期間を延長する場合

3ヵ月なり6ヵ月なりの試用期間の終期が迫ってきたが、どうしても判断がつかないこともあります。
正式採用して問題ないとまでは言えないが、本採用拒否というほどの問題でもないという状態です。

このようなときには、試用期間の延長ということを考えます。

試用期間を延長するには、あらかじめ延長の可能性があることと、延長期間を就業規則に定めておくか、合意を得るかしなくてはりません。

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本採用拒否をするときの手続

前回述べた通り、本採用拒否も解雇にあたります。
そのため、30日以上の解雇予告か平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払が必要となります。
ただし、雇い入れから14日以内の場合は必要ありません。

試用期間の途中で本採用拒否をする場合

試用期間の満了を待たずに本採用拒否ということになることもあり得ます。
もちろん、就業規則にそのことも記載しておかなくてはならない。

そのような判断をするのは、もうこれ以上期間を費やしても改善の見込みがないという場合ですね。
ただ、判断が早すぎるとされる可能性もあるので、慎重に考える必要があります。

有期契約労働者の試用期間

有期労働契約の社員に試用期間は設定できるのでしょうか。

これは可能です。

この場合で、本採用拒否となった場合、労働契約途中での解約となる可能性がありますが、試用期間という性格上、解約の有効性は通常より緩く判断される可能性はあります。

ただ実務的には、適格性なしと判断されたら、労働契約期間の満了をもって雇止めとするのが一般的でと思われます。

正社員登用した場合、試用期間は設けられるか

では有期契約社員を正社員に登用した場合、改めて試用期間を設けることはできるでしょうか。

これは、たとえば有期契約のときは自動車運転手だったところ、正社員登用後は事務職になるというように、登用後は全く異なる職種になるという場合でない限りできないものと考えていいでしょう。

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