困りごと

【試用期間中、遅刻が多く勤務態度も悪い。正式採用していいものか、判断に迷う】

問題の所在は

・試用期間とはそもそもどのようなものか
・その間に会社は新入社員の何を判定するのか
・実際に試用期間の結果、正式採用しないということがあり得るのか、あるとしたらそれはどのようなときか
---これらがポイントになります。

また、適性や能力に問題がある社員に対し、会社は人事異動などをすることができるのか、あるいは、それをしなくてはならないのかという問題もからんできます。

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試用期間とは

ほとんどの会社には「試用期間」というものがあり、就業規則にも次のように定められているのが一般的です。

(試用期間)
第○条 新たに採用した者については、採用の日から3ヶ月間を試用期間とする。ただし会社が特に認めたときは試用期間を設けないか、期間を短縮することがある。
2.試用期間の途中または終了時に、能力、勤務態度、健康状態等に関して社員として不適当と認められる者については、定められた手続きによって解雇する。
3.社員としての適格性を判断するために必要と認めたときは、最大3ヶ月の範囲で試用期間を延長することがある。
4.試用期間は、勤続年数に通算する。

入社して3ヶ月など一定の期間は、「お試し期間」という位置づけにし、その間に社員としての適性を会社は見極めるわけです。
ここで「適性あり」と判定されれば、正式採用となります。
しかし「適性なし」と判定されれば、正式採用とはならないこともあります。
これを「本採用拒否」といいます。

試用期間は、法的には「解約権留保つきの労働契約が成立している」とされます。
これは、試用期間中に社員としての適格性を判定し、試用の結果、不適当と判断されたときには労働契約を解約しうるとの留保がなされている、ということです。

採用内定と似ていますが、試用期間はすでに雇用関係に入っているという点が、採用内定と決定的に異なります。
そのため、試用期間中や試用期間終了後の本採用拒否は、採用内定の取り消しよりハードルが高いのです。

なお、応募から本採用までの採用プロセスを図解すると、次の図のようになります。

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試用期間の長さは

試用期間の長さは会社によって様々ですが、2ヶ月~6ヶ月というのが一般的です。
もちろん、就業規則に期間をきちんと定めておかなくてはなりません。

試用期間の長さに関する法律上の規定はありませんが、不当に長くするのは許されません。
長くても1年までと考えるのが妥当なところでしょう。

試用期間の延長はできるのか

能力や勤務態度など、従業員としての適格性に疑問符がつくが、教育指導によっては改まる可能性も残されているため、もう少し様子を見たいという場合もあります。
こういうケースでは、試用期間を延長するという方法があります。

ただし、試用期間は労働者から見ると不安定な契約の期間ですから、会社はこのような方法を自由にとれるわけではありません。
試用期間の延長が許されるのは、次の条件を満たす場合に限られます。

① 就業規則に延長規定がある
② 延長に合理的な理由がある

延長する場合、期間を区切らなくてはなりません。
また、延長期間も、不当に長くすることは許されません。もともとの試用期間と合わせて、1年が限度でしょう。

試用期間は勤続年数に入れるのか

年次有給休暇の発生要件としての勤続期間を見る場合、試用期間も含めなくてはなりません。

一方、退職金や永年勤続表彰など、会社が独自に定める制度については、自由に決めて差し支えありません。

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どんな場合に本採用を拒否できるのか

試用期間の終了までの間に、従業員としての適格性に欠けると判
断したら、「本採用拒否」ということになります。

このとき、本採用拒否できる要件としては、次のようなケースがあてはまるでしょう。
 ① 勤務成績不良、能力不足
 ② 勤務態度不良、協調性欠如
 ③ 経歴詐称
ただし、実際に本採用拒否を行うには、次の2つの要件が必要です。
①解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在すること
②社会通念上相当であること

あなたの会社に合った就業規則を作成するために

以上、試用期間をめぐる問題について解説させていただきました。このようなことも就業規則をつくる際には重要なポイントになります。
先に述べたとおり、就業規則は事業活動を行うためにとても重要なツールです。
しかし、ご自身で膨大な法令情報を把握し、自社にとって最適なルールや働き方を就業規則として明文化することは難しいと感じる方も多いと思います。
ただ形を整えるだけではなく、きちんとした就業規則を整備するためには、やはり就業規則の作成や見直しに強い社会保険労務士に依頼することをオススメしています。

ヒューマンキャピタルでは、丁寧なヒアリングで現状を診断し、会社の実情にフィットした就業規則をご提案する「就業規則コンサルティング」サービスを行っていますので、就業規則の作成・見直しでお悩みの方はぜひご相談ください。