試用期間の長さはどのぐらいにすべきか
試用期間は、あらかじめ期間を定めなければなりません。
この期間は、前のパートで述べたとおり、法的には「解約権留保つきの労働契約」の期間となるため、働く人は不安定な状態に置かれることになります。
「試用期間とは何か」
そのため、労働者保護の観点から、「従業員としての適格性を判断できるまでの期間とする」というような、期限がはっきりしない定めにすることは許されていません。
では、試用期間の長さはどの程度にすべきでしょうか?
一般的には、2ヶ月~6ヶ月としている会社が多いようです。
試用期間の長さに関する法律上の規定はありませんが、不当に長くするのは許されません。
裁判例では、6ヶ月~1年3ヶ月の見習い社員期間終了後、6ヶ月~1年の試用期間を設けるという制度について、公序良俗に反し無効としたものがあります(ブラザー工業事件・昭和59 年・名古屋地裁)。
常識的な期間は2~6ヶ月程度、長くても1年までと考えるのが妥当なところでしょう。
「試用期間は14日が限度」は誤解
試用期間に関しては、労働基準法第21条に次のような定めがあります。
この「第4号」が、試用期間中の労働者を指します。
第21条 前条の規定(解雇予告)は、次の各号の1に該当する労働者については適用しない。但し、(中略)第4号に該当する者が14 日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、この限りでない。
(1) 日日雇い入れられる者
(2) 2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
(3) 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者
(4) 試の使用期間中の者
つまり、試用期間中は解雇予告の規定が適用除外されますが、入社して14日を超えたら適用除外とならないのです。
この条文を誤解して、「試用期間は14日以内でなくてはならない」とか、「14日を超えたら試用期間満了後の本採用拒否はできない」と思っている経営者の方がいますが、これは誤解です。
労働基準法第21条で定めているのは、あくまでも「解雇予告または解雇予告手当が必要かどうか」です。
つまり、14日を超えたら、試用期間であっても解雇予告(または解雇予告手当)が必要だといっているだけであり、試用期間の長さそのものを規定しているわけではありません。
試用期間の延長はできるか
能力や勤務態度など、従業員としての適格性に疑問符がつくが、教育指導によっては改まる可能性も残されているため、もう少し様子を見たいという場合もあります。
こういうケースでは、試用期間を延長するという方法があります。
ただし、前述したように、試用期間は働く人から見ると不安定な契約の期間ですから、会社はこのような方法を自由にとれるわけではありません。
試用期間の延長が許されるのは、次の条件を満たす場合に限られます。
- 就業規則に延長規定がある
- 延長に合理的な理由がある
延長する場合、期間を区切らなくてはなりません。
また、延長期間も、不当に長くすることは許されません。もともとの試用期間と合わせて、1年が限度でしょう。
試用期間は勤続年数に入れるのか
年次有給休暇の発生要件としての勤続期間を見る場合、試用期間も含めなくてはなりません。
一方、退職金や永年勤続表彰など、会社が独自に定める制度については、自由に決めて差し支えありません。
試用期間の決め方、運用などでお困りの会社様、ヒューマンキャピタルに一度ご相談ください。
最適なお答えを出すべく尽力します。
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