人事異動範囲の明示が義務づけられる?

3月17日の日本経済新聞に、人事異動の範囲を企業が労働者に明示するよう義務づけることを厚生労働省が検討しているという記事が掲載されていました。

今でも、労働契約締結時には従事する業務の内容や勤務の場所を明示することになっています。
記事によると今後は、人事異動などにより変更の可能性があれば、その範囲も示すようにさせるということです。
たとえば、「都内」、「営業」などですね。
ただし、「会社の定める場所」といった包括的な表現も認めるということです。
これがOKなら、これまでと実質的にあまり変わらないようにも思えますが、激変緩和も現実には必要ということなのでしょうね。

またこれらはいずれも新規の雇用契約のとき、平たくいえば入社の時の話ですが、それ以外のとき、たとえば、主要な労働条件を変更する場合は再度労働条件を明示するよう会社に義務付けることも検討するようです。

人事異動は会社に広範な裁量がある

日本の労働契約は「空白の石版」などと言われています。
労働契約締結時には、前述の通り従事する業務の内容を明示することにはなっています。
しかしそれは例えば営業とか事務といったような、かなり包括的な示し方になっていることが多いです。
具体的にどのような営業なのかとか、どれぐらいの成果を期待されているのかといったことまでは示していません。

そして、ここからがポイントになってきますが、入社した後の変更、すなわち、人事異動などによる業務内容の変更、所属部署の変更、そして勤務地の変更は基本的に会社の任意となっています。
会社の「人事権」として、幅広い裁量権が認められています。
社員は会社に我が身を委ねるというような形になるわけですね。
日本の「就職」は「就社」であると言われる所以です。

それとある意味引き換えのように、社員は強い解雇規制で守られているというかたちになります。
社員の解雇規制、終身雇用慣行と、会社の強い人事権はいわばコインの裏表のようなものだといっていいと思います。

「人」基準の人事制度

それを支えていたのが、年功基準型賃金制度や能力基準型賃金制度です。

「年功基準」と「能力基準」。この2つに共通しているのは、「人」基準だということです。
その人の「年功」、あるいはその人が身につけた「能力」に着目しているということですね、
それと対極にあるのが、「職務基準」です。

「人」基準人事制度は人事異動・ジョブローテーションとの親和性が高いです。
人事異動によって担当職務に変更があっても、賃金を変える必要がありません。
本人の年功や身につけた能力は、人事異動があっても変わりようがないからです。
これが職務基準だと、そうはいきません。人事異動によって担当する職務のレベルが変われば、それに応じて賃金も変えなくてはならなくなります。当然下がることもあります。

ただ、このようなやり方の問題点は、自分がいつどこに行かされるのか、将来はどんな仕事を担当するのかが見えないということです、

前述の通り会社に我が身を委ねているかたちなので。

キャリア意識の高まりと終身雇用慣行の揺らぎ

しかし、キャリア意識の高まり、そのきっかけをつくったともいえる終身雇用慣行の揺らぎは、これまでのやりの見直しを迫っています。

職業生活を通じてどのような経験を積み、どのようにキャリアアップしていくのかを主体的に考えていこうという機運が若い人を中心に高まっています。

入社後の人事異動の範囲などをあらかじめ明示するようにというのも、この流れを後押しすると思われます。

最終的にどのようなかたちになるか現時点では分かりませんが、会社の人事権に何らかの制約が課せられることになる可能性は十分あります。
一方、そのような制約と解雇権の制限との関係も議論の俎上に上がってくるのでしょうけど。

いずれにしても、個人のキャリア意識の高まりにしっかり向き合っていくことが、今後の会社の人材戦略を考えていくうえで必須となると思われます。

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