何を意識して賃金制度改革を進めるか

新しい賃金制度はどんな姿にしたいのか

「ウチの賃金制度、いまのままではよくないな」
こんな思いから、賃金制度改革は始まります。

賃金制度改革で大事なのは、「新しい賃金制度はどんな姿にしたいのか(新しい賃金制度が備えるべき要件)」ということです。
これは私は次の5つに整理できると思っています。

  • 合理性
  • 透明性
  • 公平性
  • 納得性
  • 運用性

制度改革を進めていく際には、常にこの「5つの要件」を意識して進める必要があります。
そうすることで、新しい賃金制度は軸のぶれない、しっかりしたものになるのです。

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人事・賃金制度、労務、就業規則、社会保険手続のご相談に専門家が真摯に対応致します。→「ご相談、お問い合わせはこちらから」

賃金制度改革「5つの要件」

合理性

合理性には、①基準、②手続きの2つの側面があります。

基準とは、賃金決定基準、人事等級基準、人事評価基準のことです。これらが合理性のあるものになっていることが必須です。

手続きや運用書式も重要です。たとえば人事評価シートなどは、何をどのように書くのかが合理的に作られていないと、運用が混乱します。

透明性

透明性とは、賃金決定基準や決定プロセスを整備し、社員に公開するということです。

どのようなプロセスで評価や賃金が決まるのか、ブラックボックスになっている会社が依然としてありますが、透明性のない人事制度は社員の不信感を招き、モチベーションにも悪影響を及ぼします。

社内規定やマニュアルを整備し、人事評価結果や賃金改定結果のフィードバック、苦情処理の仕組みの整備なども進める必要があります。
また、評価のフィードバックの場合、単に「A」、「B」といった評価標語を伝えるだけでなく、評価の理由や今後本人に求めることなどを説明するようなやり方が求められます。

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公平性

公平性には「結果の公平」と「手続の公平」の2つがあります。
結果の公平は決定した賃金や人事評価結果が、手続の公平は決定までのプロセス・方法がそれぞれ対象になります。

公平感は主観的なものです。

そして、自分の人事評価結果に納得がいかないなど、結果の公平が損なわれていると感じると、今度はその評価がどのような基準・手続で決められているかという手続きの公平に関心を持ち始めます。
そして、もしそこにも納得感がないと、一気に不満が高まります。逆に、ここがそれなりのものになっていれば、完全とまではいかなくても、ある程度の納得は得られます。

また、2つの公平感のうち、「結果の公平」を万人に対して保証することは、まず不可能です。
その点は「手続きの公平」も同様なのですが、こちらは、会社のやり方や努力次第で、かなりのレベルにもっていくことができます。

結果の公平はもちろん重要です。
ある意味、人事制度というのは、この結果の公平を目指した不断の営みと言えます。
目指す姿ではありますが、達成は前述の通りなかなか難しい。
その点からも「手続の公平」は人事制度運用で重要な要素となってくるのです。

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納得性

これは、経営者にとっての納得性と働く人にとっての納得性の両面があり、前述の合理性および公平性と密接な関係があります。
この2つがそれなりのものになっていなければ、納得性のある賃金とはならないでしょう。

しかし、合理性、公平性のいずれも、「絶対」はありません。
経営者、従業員の全員が100%、合理性、公平性を認めるということはあり得ないのです。

重要なのは、「この程度ならいいだろう」と大半の人が感じるということです。
したがって、合理性、公平性両方のレベルをどの程度までもっていけばいいのかを十分検討し、労使で話し合うことが必須なのです。

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運用のしやすさ

制度設計においてある意味一番大事なのはこの要素です。
制度を作るときは、次のことを十分に考えて、運用可能なものにしなくてはなりません。

会社の規模、組織、体制

人事部門が独立の組織となっているか、なっているとしたら、その規模・体制はどうなっているのかによって、運用可能な制度は異なります。
また、組織構造の複雑さによって、制度の内容、手続きも異なります。

マネジメント意識

管理職に部下のマネジメントをきちんとやろうという意識がどの程度あるのかも、制度設計において念頭におくべき事項です。
たとえば、目標管理制度や評価面談制度は、管理職のマネジメント意識がある程度高いことが前提になります。
そこがもし不十分だとしたら、目標管理制度を導入しても、いきなり賃金につなげるのは避けるのが賢明です。
制度の趣旨やねらい、目標設定や面談のノウハウなどがある程度でき上ってからにした方がいいでしょう。

企業文化

企業文化が上意下達・軍隊型なのか、自律型なのかによっても、制度の内容は異なります。

たとえば、軍隊型の会社に目標管理制度を入れても、ノルマ管理制度になってしまいます。

もしそのような企業文化を変えるために新しい制度を入れるのであれば、変化が起こるまでは賃金に手をつけるのはやらない方がいいでしょう。

わが社の賃金制度をどうするか

今回は賃金制度改革にあたって考えるべき基本的なことを解説させていただきました。

会社が発展していくうえで、賃金制度の整備は欠かせません。
ヒューマンキャピタルは豊富な経験と専門性を元に、丁寧なヒアリングと綿密なミーティングをもってクライアント様に最適な賃金制度をアドバイスをさせていただきます。
ぜひ一度、ご相談ください。

01_1.就業規則作成 01_2.就業規則作成、見直しの実際 02_1.メンタルヘルスと就業規則 02_2.ハラスメントと就業規則 02_3.労働契約と就業規則 03.労使協定 10.採用、試用期間 11.退職、解雇 12.服務 13.懲戒 14.人事 15.労働時間 16.賃金規程 17.安全衛生、メンタルヘルス 18.育児・介護 19.ハラスメント 19_1.セクハラ 19_2.パワハラ 19_3.マタハラ 20.年少者 31.人事・賃金制度全般 32.人事等級制度 32_2.昇格、降格 33.人事評価制度 34.賃金制度 35.ジョブ型人事 36.賞与 40.モチベーション、エンゲージメント 40_2.心理的安全性 41.人材育成 45.採用 51.テレワーク 52.有期雇用、パート 53.正社員登用 54.高齢者雇用 60.社会保険 61.入社時の社保 63.事業所新設と社保 65.労災、通災 70.業界別人事・労務 71.外食・小売業の人事労務 80.ダイバーシティ、多様化 80_2.複線型人事 85.働き方改革 100.コラム