代表的な3つの賃金制度

賃金制度には何があるか

賃金制度にはどのようなものがあるかを考える場合、どこに目をつけるかがポイントになります。
それはつぎの2つ。

  1. 能力など、何を基準に賃金を決めるかという、決定基準による分類
  2. 月単位、年単位などの決定単位による分類

決定基準によって分類した場合、賃金制度は職能給、職務給、役割給、年功給などに分かれます。
一方、決定単位によって分類した場合は、月給制、年俸制、時給制・日給制、歩合制・出来高制などになります。

ここでは、「決定基準による分類」について概要をお話ししましょう。

賃金の決定基準

賃金制度は複数の項目で構成されているのが一般的です。
そして賃金項目それぞれに、何らかの決定基準があります。
たとえば、家族手当であれば家族の種類や人数、役職手当であれば役職ランクなどになります。

ただ、「当社の賃金の基準は〇〇」という場合、基本給など、賃金制度の中心にくる賃金の基準を指すのが一般的です。
これを「賃金体系」といい、次の3つが代表的です。

  1. 職能給
  2. 職務給
  3. 役割給

職能給

職能給は、社員が保有・発揮している職務遂行能力を基準にした賃金です。
能力レベルに応じて職能等級が設定されます。能力レベルが上がれば等級が上がり、賃金も上がります。
ただし、能力レベルが変わらなくても、習熟による昇給があります。
要するに、担当している仕事をどの程度うまく、早く、成果にやれるかということですね。
この習熟の伸び方によって毎年何かしらの昇給があります。これが職能給の「定期昇給(定昇)」です。

従来の職能給は降給・降格がないのが一般的でしたが、近年は見直しを図る会社が増えています。

職能給のメリット、デメリット

メリット

社員本人の能力を基準にするため、柔軟な人材配置・異動が可能です。
担当する職務のレベルが変わっても、能力そのものは変わりませんから、賃金が下がるということがないためです。

デメリット

一方、賃金額と、実際に果たしている役割や成果とのズレが生じやすくなります。
また、能力はよほどのことがなければ少しずつ上がっていくものという前提に立っているため、安定感がある一方、その期に上げた成果や、現実に担っている役割と賃金の関係が薄くなりがちです。

職務給

職務給は、社員が担当する職務のレベルに対応して賃金が決まる仕組みです。
職務のレベルに対応して職務等級が決まります。
職務等級が上がらなけれは賃金は上がらないのが原則です。

職務給のメリット、デメリット

メリット

職務の定義・レベル分け(これを職務分析・職務評価といいます)が適切にされていれば、決定基準が明確な賃金です。

デメリット

一方、柔軟性に欠ける面があり、また、長期雇用を前提に人事異動・職務変更を繰り返す伝統的な日本企業の人事に馴染まないという問題が指摘されています。

役割給

職務を大ぐくりにした「役割」のレベルを基準にした役割給が近年広がっています。
職能給の柔軟さと職務給の明確さを併せもつような賃金にしようという試みといえます。

「役割」というのが少し分かりにくいところですが、言葉で定義すると職務を通じて果たしている役割となります。

たとえば、「人事採用職」というと「職務」です。これを「会社に必要な人材を採用することにより事業の遂行と発展を推進する」とか、もっと抽象化して「事業の遂行と発展に必要な施策を計画、実行する」などと定義すると「役割」になります。

担当している職務そのものの価値ではなく、職務を通じて果たしている役割の価値が基準になりますので、人事異動などで職務が変わっても、ただちに賃金が変わることはありません。そのため、柔軟な人事配置・異動が可能です。

ただし、等級(賃金)に見合った役割が果たせない状態が続いた場合は、原則として等級が下がり、それに伴い賃金も下がります。
したがって、職能給ほどの柔軟性はありませんが、そのかわりに、実際に果たしている役割や成果とのズレはそれほど大きくはなりません。

どんな賃金制度にするのが適当か

職務が明確に定義でき、異動がほとんどないような職種であれば、職務給が向いていると言えます。

一方、長期雇用を前提に、柔軟な人事配置・異動を行うような場合は、役割給や職能給が馴染みます。

また、プロフェッショナルな職種で個人の成果がはっきりしている職種の場合は、職務給または役割給を適用し、それに業績・成果連動部分を組みわせるのがいいでしょう。

複数を組み合わせてもよい

賃金制度は全社でひとつでなくてはならないということはありません。
職種、階層、雇用形態によって、異なる制度を適用することも可能ですし、その方が望ましいでしょう。

自社の実情を踏まえ、最適な組み合わせを検討してください。

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