休職制度の意味は?

心身の不調で休み続けた場合、休職に入ります。

休職制度とは、何らかの理由で仕事ができなくなった社員を、一定期間、就労を一時的に免除もしくは禁止する措置をいいます。

休職の主な事由として、次のようなものがあげられます。

・私傷病
・公職就任
・他社出向

休職制度自体は、法律上の義務ではありませんが、働く人にとっては、一定期間解雇が猶予されるというメリットがあります。
他方、会社にとっても人材の流出を防ぐことができるというメリットがあります。

病気などで会社に出てこれなくなったらとたんに会社を辞めなくてはならないということだと、安心して働くことができません。
休職制度の存在は、社員のモラール、モチベーションにもプラスの影響を与えます。

休職制度に関して会社が検討すべきことは?

社員のメンタルヘルス不調に対応して、会社は次のようなことを考え、就業規則に入れる必要があります。

  • どのぐらい休みが継続したら休職とするのか
  • 会社に出てきたり、休んだりを繰り返している場合は、どうすればいいのか
  • 会社に出てきているものの、仕事にならない状態の場合は、どうすればいいのか
  • 休職期間はどれぐらいが適当か。
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どのぐらい休みが継続したら休職とするのか

メンタルヘルス不調で欠勤が続いたら、休職に入ります。
どのぐらいの欠勤期間で休職にするのかは、会社によって様々です。
欠勤期間と休職期間を合わせてどのぐらいが会社の許容範囲かを考えて決めます。

断続的に出勤と欠勤と繰り返している場合

メンタルヘルス不調の場合、これが多いです。
「欠勤が継続して〇〇ヶ月以上に及んだら休職とする」という定め方しかしていない場合、出勤と欠勤を繰り返す状態がずっと続いてしまいます。

「継続して」を削除すればいい?
確かにそうすれば、欠勤はすべて通算できるという解釈もできなくはありません。しかし、解釈をめぐってトラブルになる可能性も十分あります。

以上から、欠勤と欠勤の間の出勤が一定日数(5日など)以内の場合は、欠勤を通算するという定めを就業規則に置く必要があるのです。

出勤しているものの仕事になっていない場合

「大丈夫です」と言って休もうとしないという場合、このようになることが少なくありません。
この場合、休むよう説得する必要があります。
それでも休まなければ、会社の命令として休ませます。

少し固い話になりますが…
会社に雇用されるということは、すなわち、会社と労働契約を交わすということです。
労働契約というのは、社員が労務を提供しその対価として賃金を受け取ること、会社から見れば、労務の提供を受けて賃金を支払うことです。
この「労務」というのは、会社が求め、本人が提供を約束したものであることが原則です。

ですから、会社に来てはいるものの、ほとんど仕事になっていない状態というのは、会社が求める労務を提供したことにはなりません。
したがって、会社は、このような不完全な労務の「受領を拒否」できます。
つまり、労務の提供をさせない、すなわち、会社を休むような命令を出せるということです。

会社が社員を休ませるような命令を出す根拠は、このようになります。
しかし、現場でこんなことをあれこれ考えるのは難しいでしょうから、就業規則に、心身の不調で業務に支障をきたしているときは退社命令を出す旨を規定しておくのがいいですね。

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働く人の心身の健康が第一

会社が退社命令を出せるというお話をしてきましたが、それより何より重要なのは、社員の心身の健康です。

本人の言うままに出社させた結果、病状が悪化してしまっては大変です。
繰り返しになりますが、きちんと休むよう説得してください。

責任感が強く、休むと迷惑がかかると思っている社員には、休んで療養に専念することが会社にとってもいいと伝えるのがいいですね。
実際、上記のようなことになると、会社が安全配慮義務違反を問われる可能性も出てきます。
その面からも、しっかり対応するのがいいですね。

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休職期間

休職期間はどのぐらいが適当かは、一概にいえません。
特に法の定めはないので、会社の体力などを念頭に、可能な範囲で設定します。休職事由や勤続年数に対応して設定するのが一般的です。
なお、勤続期間が短い場合は休職制度の対象外にしたり、勤続期間によって休職期間に差をつけたりすることも可能です。

賃金を支払うか、無給にするか

私傷病休職の場合、賃金をどうするかは会社の自由です。
このような休職は、法的には「労働者側の帰責事由(過失や故意によってそのような状態にした責任)による労務提供不能」となるので、使用者側に賃金支払い義務はありません。したがって、無給
としても問題ありません。

また、休職期間を勤続年数に算入するかどうかも任意です。

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休職期間中は、定期的な診断書の提出を義務づける

傷病休職期間は、治療に専念してもらうのが原則です。ただ、休職中の状況を会社がまったく把握しないというのも問題です。
従業員の側でも、放置されたままだと不安を感じるでしょう。

そこで、定期的に主治医の診断書を提出させ、状況を報告させるようにするのが適切です。

あなたの会社に合った就業規則を作成するために

以上、メンタルヘルス、休職をめぐる問題について解説させていただきました。
メンタルヘルスにかかわることは就業規則をつくる際にも重要なポイントになります。
就業規則は事業活動を行うためにとても重要なツールです。
しかし、ご自身で膨大な法令情報を把握し、自社にとって最適なルールや働き方を就業規則として明文化することは難しいと感じる方も多いと思います。
ただ形を整えるだけではなく、きちんとした就業規則を整備するためには、やはり就業規則の作成や見直しに強い社会保険労務士に依頼することをオススメしています。

ヒューマンキャピタルでは、丁寧なヒアリングで現状を診断し、会社の実情にフィットした就業規則をご提案する「就業規則コンサルティング」サービスを行っていますので、就業規則の作成・見直しでお悩みの方はぜひご相談ください。

01_1.就業規則作成 01_2.就業規則作成、見直しの実際 02_1.メンタルヘルスと就業規則 02_2.ハラスメントと就業規則 02_3.労働契約と就業規則 03.労使協定 10.採用、試用期間 11.退職、解雇 12.服務 13.懲戒 14.人事 15.労働時間 16.賃金規程 17.安全衛生、メンタルヘルス 18.育児・介護 19.ハラスメント 19_1.セクハラ 19_2.パワハラ 19_3.マタハラ 20.年少者 31.人事・賃金制度全般 32.人事等級制度 32_2.昇格、降格 33.人事評価制度 34.賃金制度 35.ジョブ型人事 36.賞与 40.モチベーション、エンゲージメント 40_2.心理的安全性 41.人材育成 45.採用 51.テレワーク 52.有期雇用、パート 53.正社員登用 54.高齢者雇用 60.社会保険 61.入社時の社保 63.事業所新設と社保 65.労災、通災 70.業界別人事・労務 71.外食・小売業の人事労務 80.ダイバーシティ、多様化 80_2.複線型人事 85.働き方改革 100.コラム