労働時間、勤務管理

テレワークでは、労働時間管理をどうすればいいのかということがよく問題になります。

「〇〇時~〇〇時まで仕事をしていたことになっているけど、本当にそうなのか分からない」といった声はよく聞かれます。
この問題、どう考えればいいでしょうか?

テレワークにおける労働時間管理として考えられるのは、次の通りです。

①通常の労働時間管理
②事業場外みなし労働時間制
③裁量労働制
④フレックスタイム制

このうち、裁量労働制及びフレックスタイム制については要件が定められており、既定の要件に該当すれば適用可能です。実際のところ在宅勤務導入以前に、これらの制度が相応しければ既に適用されているでしょうから、それをそのまま継続するだけです。(もちろん、在宅勤務をきっかけにこれらの制度の導入を検討するということもあるとは思いますが)。

よってここでは、事業場外みなし労働時間制と通常の労働時間管理について考察します。

事業場外みなし労働時間制

「事業場外労働のみなし労働時間制」とは、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な場合に、所定労働時間または労使協定で定めた時間を労働したと「みなす」制度です。
外勤の営業部員の場合など、1日中会社の外に出ているような場合、会社で帰りを待っている上司は、その部員が外で何をしているのか本当には分かりません。
管理のしようがないわけです。
そのような場合は、所定労働時間または「通常はこれぐらいだろう」という時間に「みなす」ということができるわけです。

自宅も事業場外ですから、この制度の適用は不可能ではありません。

厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」によると、在宅勤務時における事業場外みなし労働時間制適用の要件は以下の通りとなります。

①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと

「情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと」とは、情報通信機器を通じた使用者の指示に「即応する義務がない状態」であるということです。

この「使用者の指示に即応する義務がない状態」とは、次のいずれにも該当しないことを指すとされています。

・使用者が労働者に対して情報通信機器を用いて随時具体的指示を行うことが可能である
・使用者からの具体的な指示に備えて待機しつつ実作業を行っている状態又は手待ち状態で待機している状態

これは例えば、次のような場合であれば「使用者の指示に即応する義務がない状態」に該当するということです。

・回線が接続されているだけで、労働者が自由に情報通信機器から離れることや通信可能な状態を切断することが認められている場合
・会社支給の携帯電話等を所持していても、労働者の即応の義務が課されていないことが明らかである場合

②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

最大のポイントは労働時間や業務状況の把握が可能か否かです。
たとえば、携帯電話(会社支給のものやBYOD(Bring Your Own Device)で自己所有の携帯電話を業務で使用している場合)は常時電源は入れているのが普通でしょう。そして、上司などから着信があれば、移動中や顧客との面談中などでなければ即応するでしょうし、できない状態であっても、その状態がなくなればできるだけ早くコールバックするのが普通です。「即応は義務付けていない」と会社が主張しても、それが認められるかどうかは何ともいえません。
またPCも業務時間中は常時接続していますし、離れることや切断の自由が認められているという点についても、その判断は微妙です。
さらに、業務日報の提出が義務付けられているような場合、その内容によっては労働時間のみなしが否定されます。(参考:阪急トラベルサポート事件、最二判平26.1.24)

以上の点を念頭に、事業場外みなし労働時間制の適用の可否を慎重に検討する必要があります。

通常の労働時間管理

みなし労働時間制を使わない場合に問題になるのは、「中抜け時間」の管理です。この時間は、ノーワーク・ノーペイの原則から無給となります。しかしこの時間の把握は本人の自己申告によるしかありません。
ここを上司が把握できるようにしようと、在宅勤務中のパソコンのWebカメラを常にオンにしておくよう指示するという例がありますが、これは大いに問題ありです。

改めて考えてみると、テレワークでなはい、つまり在社でも実質的な中抜け時間は存在します。パソコンに向かって仕事をしているように見えたが、実は仕事とは無関係なWebサイトを見ていた、などが典型です。

在社、在宅いずれの場合でも問題の本質は変わらないようにも思います。製造現場などの現場作業はともかく、事務仕事の場合、見てるだけでは本当に仕事をしているのか、仕事の密度はどうなのかは分かりません。ただ、在宅の場合は目の前にいないので、余計に分かりにくくなったということでしょう。

そう考えると、テレワークにおいても業務遂行状況(本当に仕事をしているか、仕事に集中しているか)を正確に把握しようなどというできもしないことにエネルギーを注ぐのではなく、質と量の両面からやるべき仕事が完遂しているのかを把握する方が有効性は遥に高いといえます。
したがってテレワークにおいては、中抜け時間を考慮に入れた日々の労働時間は原則的には本人の申告を受け入れ、その一方で、仕事のアウトプットの評価と賃金・賞与のリンクを考えるべきでしょう。
そのためには1日、あるいは1週間などの一定期間の標準的な業務量、業務の遂行レベルなどを把握しておく必要があります。新しい働き方においては、労働時間数の呪縛からの脱却を図る必要があるということです。

もちろん始業・終業時刻の把握、労働時間に応じた賃金支払いは必須です。それは法令に則りきちんとやらなくてはなりませんが、一方で労働時間数という形式要件ではなく、仕事のレベルや成果という実質要件で賃金などの処遇を決めるという仕組みの構築がますます必要となっているのです。