私生活上のことでも、ある程度は規制できる
従業員の私生活は、その人の自由に属することです。
いくら会社といえども、この領域にむやみと干渉することはできません。
しかし、私生活上のことでも、会社の信用や秩序に悪影響をおよぼすようなことをされては困ります。
したがって、そのような行為を就業規則などで規制することは可能です。
従業員の私生活の規制はどこまでならできるのか
では、法律的にはどのような場合に、私生活上の行為に対する規制が有効とされるのでしょうか。判例は次のように指摘しています。
営利を目的とする会社がその名誉、信用その他相当の社会的評価を維持することは、会社の存立ないし事業の運営にとって不可欠であるから、会社の社会的評価に重大な悪影響を与えるような従業員の行為については、職場外でされた職務遂行に関係のないものであっても、これに対して会社の規制を及ぼしうることは当然認められなければならない(日本鋼管事件・最高裁・昭和49 年)
会社の社会的評価にどのような影響をおよぼすかがポイント
この判例から、「会社の社会的評価にどのような影響をおよぼすか」がポイントになることがわかります。
つまり、会社の名誉を著しく傷つけたり、会社の社会的評価に重大な悪影響をおよぼす場合は、従業員の私生活であっても、会社が就業規則などに規定することが可能とされるのです。

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名誉を傷つける行為とは
では、どのような場合に、「名誉を傷つけた」「社会的評価に悪影響をおよぼした」とされるのでしょうか。再び、判例を引用してみます。
従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない

たとえば、法令違反でも…
・駐車違反をしてしまった
・公共の器物を破損してしまった
・公共の器物を破損し、そのことが新聞に報道された
…それぞれ、どう考えればいいでしょうか?
「駐車違反ぐらいなら…」
そう考える人は多いと思います。
しかし、そう言い切っていいでしょうか?
その人が、もし交通警察官だったら?
まぁ、これは極端な例ですが…。会社員ではないし。
ただ言いたいのは、行為それ自体を単独で取り上げても、判断は難しいということなのです。
判例にもある通り、次の諸般の事情を考慮して、総合判断することになります。
- 行為の性質
- 情状
- 会社の事業の種類・態様・規模
- 会社の経済界に占める地位、経営方針
- その従業員の会社における地位・職種 など
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