秘密保持は従業員の義務

技術情報、新製品情報、アライアンス情報、ノウハウ情報など、企業秘密は多岐にわたります。こうした企業秘密の保持は、会社の存亡に響くこともある重要事項です。

会社の従業員が、企業秘密を保持しなくてはならないのは当然のことです。
仮に就業規則などに秘密保持の義務が明記されていなくても、労働契約上当然に発生する「誠実義務」の1つとなります。
裁判例でも次のとおり、労働者の守秘義務を、労働契約上当然に発生する義務と定義しています。

労働者は労働契約に伴う付随義務として、信義則上、使用者の利益をことさら害するような行為を避けるべき義務を負うが、その1つとして使用者の業務上の秘密を漏らさないとの義務を負うものと解せられる(古河鉱業所事件・昭和55 年・東京高裁)

就業規則に明記するべき

ただし、現実に企業秘密の流出が頻繁に起こっている現状では、就業規則にも次のようにこの義務を明記し、従業員の情報保護への意識を高めることが必要でしょう。

在職中、退職後にかかわらず、業務上の機密、各種情報ならびに会社にとって不利益となる事項を他人に漏らしたり、会社の許可なく文書、帳簿等を第三者に閲覧させたりしないこと。また、会社で使用したパソコン、電子媒体は、私物であっても、無断で社外に持ち出してはならない。

何が「企業秘密の漏洩」にあたるのか

どんなときに企業秘密を漏らしたとするのかは、「不正競争防止法」が参考になります。
この法律では、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義しています。
すなわち、不正競争防止法による営業秘密とは、次の3つの要件にあてはまる情報を指します。

  1. 有用性:事業活動に有用な情報である
  2. 非公知性:公然と知られていない
  3. 秘密管理性:秘密として管理されている

③の要件から、普段から秘密として管理していない情報は、営業秘密とはされないことが分かります。
そして、同法ではさらに、次の3つの要件を満たす行為が不正競争であるとして、処罰の対象としています。

  • ① 対象となった情報が営業秘密であること
  • ② 情報の保有者から示されたものであること
  • ③ 不正の競業その他の不正の利益を得るか、またはその保有者に損害を加えることを目的としていること

ただし、会社が従業員に漏洩防止を義務づける企業秘密の範囲はこの範囲に限定されるものではなく、もっと幅広いものになります。
また、不注意など③の条件にあてはまらない行為も、規制・処罰の対象にできます。

したがって、本人が不正の利益を得ることや、会社に損害を与えることを目的としているわけではない場合も、不正競争にはあてはまりませんが、労働契約上の義務違反として処罰の対象になり得ます。