出産・育児に伴い、社会保険、雇用保険では様々な手続きが発生します。

手続を怠っていると、せっかく貰えたはずの給付金を貰えなかったり、払わなくていいおかねを払っていたりといった不利益につながり、トラブルにも発展しかねません。
そのため、社員が妊娠したということが分かったら、時系列で必要な手続きを整理しておくことをお勧めします。

出産・育児に関する手続きは、つぎの基準で整理すると、分かり易くなります。

①時間
・産前産後休業期間、育児休業期間、職場復帰後
②保険種別
・健康保険、雇用保険
③給付と負担
・給付金、社会保険料

出産、育児にかかる休業

出産、育児にかかる休業は次の通りです。

産前産後休業

産前6週間(多胎妊娠の場合14週間)、産後8週間です。

育児休業

子が1歳に達するまでです。
ただし、保育所に入所できないなどの事情がある場合は1歳6ヵ月または2歳まで可能です。
また、配偶者が育児休業をしているなどの場合は、子が1歳2ヵ月に達するまで休業できます。
ただし、期間は産後休業期間と合わせ11年までです。

時系列でみていくと

妊娠~出産

この間は産前産後休業に入ります。
産前休業は、出産日以前6週間(42日間)です。出産日当日まで含みます。

産前休業に入るときは、出産予定日を起点にします。

では、実際の出産日と出産予定日がずれた場合は、どういう扱いになるのでしょうか?
この場合は、実際の出産日までを産前休業、実際の出産日の翌日からが産後休業となります。
したがって、実際の出産日に応じて産前休業期間は伸び縮みするということですね。

後述の出産手当金も、それに対応します。

実際の出産日が予定日より後になった場合

たとえば、出産予定日が3月16日だった場合、産前休業は2月3日~3月16日、産後休業は3月17日~5月11日となります。
ところが実際の出産日が3月20日になったという場合、産前休業は2月3日~3月20日、産後休業は3月21日~5月15日となります。

産前休業開始日は予定日を起点として設定した元のまま、産前休業終了日、産後休業期間は実際の出産日を元に設定しなおすというかたちになります。

実際の出産日が予定日より早まった場合

一方、実際の出産日が3月11日に早まった場合、産前休業は2月3日~3月11日、産後休業は3月12日~5月6日となります。

考え方は後になった場合と同じですね。
ただ、結果としては産前休業の期間が短くなります。

ただし、実際の出産日が早まった場合に、産前休業期間をそれに合わせて前に修正することがあります。
それは、産前休業開始前から年次有給休暇などを使って休んでいた場合です。
なぜか?
それは後述の保険料免除との関係です。

産前産後休業期間中は社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)が免除されます。
休業期間が有給であるか無給であるかは関係ありません。

そこで、もし産前休業開始前から休んでいた場合で、出産日が予定日より前になった場合、その休んでいた期間を産前休業期間として、保険料免除の対象にするということです。
また、その休んでいた期間が無給だった場合は、その期間も出産手当金の対象となります。

上記の出産日が早まった場合の例で、もし年休を使って1月25日から休み始めていたとしたら、産前休業開始日は2月3日から1月29日(出産日の6週間前)に前倒しになり、1月も保険料免除の対象になります。

産前産後休業期間の社会保険の取り扱い

<健康保険>
・出産手当金の支給
・出産育児一時金の支給

<健康保険、厚生年金保険>
・保険料の免除

出産手当金

産前産後休業で休んだ日(暦日)について、1日あたり次の額がが支給されます。

支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3
ただし、支給開始日以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次のいずれかの額を使用して計算します。
・支給開始日以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額
・全被保険者の平均標準報酬月額(30万円)

支給を受けるには、「健康保険出産手当金支給請求書」を、健康保険協会または健康保険組合に提出します。
出産日等について医師の証明が必要です。同請求書に証明欄がありますので、そこに記載をしてもらうようにします。

出産育児一時金

被保険者が出産をすると、健康保険から「出産育児一時金」が支給されます。
また、被保険者の被扶養者が出産した場合は「家族出産育児一時金」が支給されます。

支給対象となるのは、妊娠4ヵ月以上の出産です。また、死産、流産等も含みます。

出産育児一時金の支給額は、かかっている病院等によって異なります。

・産科医療補償制度に加入している病院で在胎22週以上で出産した場合:420,000円
・上記以外の場合:408,000円

この給付金は、実務的には、健康保険が病院等に直接支払うという形を取ります。

そして、実際の出産費用が出産育児一時金の額より多かった場合は、本人が病院にその差額を支払います。
また、「健康保険被保険者・家族 出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書」を被保険者本人が健康保険協会または健康保険組合に提出します。

逆に、実際の出産費用が出産育児一時金の額より少なかった場合は、健康保険からその差額が支給されます。
本人が、上記申請書に領収書等を添付して健康保険協会または健康保険組合に提出します。

社会保険料免除

産前産後休業期間中および育児休業期間中は、健康保険料、厚生年金保険料が免除されます。
本人負担分、会社負担分ともに免除されます。

免除期間であっても、被保険者資格はそのままです。
また、標準報酬も変わりませんので、厚生年金の計算上は休業前の標準報酬が使われます。

免除期間は、産前産後休業開始日の属する月から、休業終了日の翌日の属する月の前月までです。
したがって、月末を含まない月は免除の対象になりませんが、14日以上休業した月については月末を含まなくてもその月の保険料は免除されます。
また、賞与にかかる保険料については、育児休業取得期間が1ヵ月を超える場合に限って免除されます。

保険料の免除を受けるには、「健康保険・厚生粘菌保険産前産後休業取得者申出書」を事業所を管轄する年金事務所および健康保険組合に提出します。

社会保険手続を請け負います

このような手続きを自社でやるのは負担が…という会社様は、ヒューマンキャピタルにご相談ください。豊富な経験に基づき、漏れなくミスなく手続を進めます。
また、実際の手続はほとんど電子化されています。
ヒューマンキャピタルは電子申請に完全対応しております。
ぜひご一報を。