「企業秩序定立権」と「人事権」

会社には「企業秩序定立権」と「人事権」というのがあります。

何やら難しい言葉ですが…

前者の「企業秩序定立権」というのは、会社の秩序をきちんと保つということですね。

企業秩序については、かなり厳格にやっている会社から比較的その辺は緩やかになっている会社まで、様々なグラデーションがあります。
しかしいかなる会社であっても、無秩序でいいということはありえないわけで、組織を維持していくためには一定の秩序というのが必要です。

したがって、会社には秩序を維持するために必要なことをする権限があるということです。

人事権と属人型賃金体系

そして後者の「人事権」。
日本企業は強力な人事権をもっていると言われています。
それは定年までの雇用は保障する一方で、定年までの間、その人にどういう仕事をやってもらうのか、どの部署で働いてもらうのかは会社の裁量でやるという構造になっているということですね。
そしてこの強力な人事権が、秩序を維持するためのツールにもなっていたという面があります。

そのようなことを可能にしていたのが、賃金体系が年功序列型や能力型などの、いわゆる「属人型賃金体系」です。
このような賃金体系であれば、異動で職務が変わっても、賃金を変える必要がないからです。

職務基準、ジョブ型になると

一方、昨今「ジョブ型」というのが流行語になっています。
この言葉、人によって定義が様々で、中には首を傾げたくなるような物言いも少なくないのですが…

それはともかく、同一労働同一賃金という社会的要請、雇用の多様化・ダイバーシティという流れの中で、担当している仕事(職務)を賃金決定の基準になっていきます。

日本企業の賃金決定が、全面的に職務基準になるとは思えませんし、それがベストとも思えませんが、職務の要素が強くなることは確かでしょう。

さて、賃金決定が職務基準にシフトしていくと、人事権もこれまで通りとはいきません。
前述の通り、日本企業の強力な人事権の背景には非職務基準というか、属人型の賃金体系があったわけです。
これが職務基準に転換していくと、人事異動によって賃金が上下するということがおこってきます。
上がるのならともかく、会社の一方的な人事によって賃金が下がるのは、納得が得られるものではありません。場合によっては訴訟に発展します。

よって、人事異動は社内公募制など本人の希望を取り入れたものにシフトしていくことになります。

ただ、会社の人事を全て社員の希望に基づいて行うわけにはいきません。
組織の維持、秩序の維持ができなくなります。

会社の必要性と働く人のニーズの間の「折り合い」をどうつけていくか。
ここがこれからの人材活用のポイントになってきそうですね。

会社が成長していくうえで人材マネジメントは重要なポイントになります。
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