3つの人間観
人間観を表すモデルとして、①経済人モデル、②社会人モデル、③自己実現人モデルの3つがあると言われていますね。
人は何によって動くのか・動かされるのかを分類整理したものともいえます。
経済人モデルは金銭が原動力になる人、社会人モデルは集団への帰属や人との繋がりを求める人、自己実現モデルは自分の成長や自分らしい生き方に最高の価値を見出している人となります
実際はそのどれかにひとつに偏っているということ事はなく、3つの要素を併せ持つのが人間というものです。
「複雑人モデル」と言われます。
メンバーシップ型とジョブ型
従って、人事制度も3つのバランスをどうとっていくのかがポイントになってきます。
アメリカでスタンダードといわれている職務基準(ジョブ型)や成果主義というのは、①の経済モデルに準拠よっていると言っていいでしょう。
一方日本で標準とされているメンバーシップというのは、社会人モデルと言っていいと思います。
ただ、職務基準の本家とされるアメリカはいま、社会人モデルや自己実現人モデルのほうに人材マネジメントが向かっているように思われます。
心理的安全性というのが強調されるのも、その一つの表れと言っていいと思います。
職務基準から人基準へシフトしているという話も聞きます。
このことと、社会人モデルや自己実現人モデルへのシフトという動きは、パラレルなのかと思われます。
その一方で日本では、人材マネジメントの基盤となっているメンバーシップ型が否定的なニュアンスで語られることが多くなっています。
そして、職務基準・ジョブ型に向かおうとしている、つまり経済人モデルのほうに向かおうとしている感があります。
ただ、もともと職務基準・成果主義であったアメリカと、年功序列型・メンバーシップ型であった日本とでは、もともとのスタート地点が違います。
ですから、アメリカ型人材マネジメントと日本型人材マネジメントが同じになってきているという言い方をする人がいますが、ことはそんなに単純ではありません。
日本型人事は職務(ジョブ)と無関係?
これまで日本型とされてきた年功序列型は、基準が曖昧であるとか、働く人の貢献度合いがうまく反映されてないというデメリットが以前から指摘されていました。
それがいよいよ限界に来ており、制度疲労を起こしているのが現状かと思われます。
よって、職務という明確な基準を作っていこうという動きは妥当かと。
もともと日本でこれまで標準とされていた職能等級・職能給も、正確にいうと「職務遂行能力」を基準にしています。
つまり、職務との関係は設計当初から意識されていたのです。
しかし実際の日々の運用の中で、職務との関連性が薄くなり、切り離されてしまいました。
その結果、職能給と言いながら年功序列型賃金と同じような姿になってしまったのが現状です。
日本型人材マネジメントの利点を捨て去らないこと
気がかりなのは、日本型メンバーシップのメリットをこれかれからどうしていくのかという議論が充分なされているようには思われないことです。
ジョブ型人事というのがブームになっています。
前述の通り、職務を基軸にしていこうという動き自体は、正しいやり方だと思います。
一方で、柔軟性などのこれまでの日本型人事の良さを破壊してしまうようなことになってはよろしくないと思われます。
日本型人材マネジメントの特徴は、メンバーシップ型にあると言われています。
職務につくというより、メンバーとしてその組織に向かえ入れられる、「就職」ではなく「就社」というかたちで会社に入るということですね。
そし、て我が身を全て会社にゆだねていくということです
その人の全人格を会社に預けるようなやり方が良いとは思えません。
しかし働く人をメンバーとして組織に向かえ入れて、仲間としてともに共通の目標に向かっていくというあり方は、極めて正しいやり方です。
・単に仕事をしてその対価たる賃金を受け取るだけ
・ただ成果だけを厳しく問われる、
・このようにそしてただそれだけで終わってしまう
---このような冷たい関係で、組織にいる人がモチベーション高く業務に取り組めるとは思えません。
メンバーシップ型を捨ててジョブ型に行くのだということではなく、それぞれのメリットを上手に活かした制度づくりと運用が求められます。