伝統的な日本の人材マネジメントはどうなる

伝統的な日本の人材マネジメントは、よく言われてるように年功序列、終身雇用を前提にしています。
いまそれが崩れつつあります。

「年功序列・終身雇用はもう終わり」と言われるようになって、多分30年以上たちます。
でも終わっていません。
冒頭、「崩れつつある」と書きました。しかし「終わり」にはならないでしょう。

これまでも、「終わりだ、終わりだ」と言われながら、年功序列・終身雇用は少しづつかたちを変えながらしぶとく生き残っています。
(そもそも声高に「終わりだ」と叫んでたのは外資系を中心としたコンサルタントとマスコミで、その「叫び」の本質は「客引き」ですわね)

ただ昨今の状況から、崩れ方がこれまでになく大きいという感じはしています。
終わりにならないまでも、大きく変貌する可能性は強いかと。

日本の昇進・昇格は同期が少しづつふるいにかけられていく仕組み

さて、この日本型人材マジメントには2つの特徴があります。
まず1つは入社年次または学卒年次が基準になっているということですね。
新卒定期採用であればこの2つはイコールになります。
そしてもうひとつは、短期間では同じ年次同士で大きな差をつけないということです。

昇進、昇格にあたって「第一次選抜」、「第二次選抜」というかたちで同じ年次の1番優秀な人、そして次に優秀な人と、1年ずつずらしていくのが、大企業を中心に一般的だったと思われます。

したがって、第一次選抜の人が昇進昇格してから何年か経つと、会社もよりますが同年次社員の大体7~8割位は課長クラスになっているいうことが多かったのですね。

課長になった人たちはその後全員、再度ふるいにかけられていきます。
そうして1年ずつ差をつけられながら部長に昇進昇格。その結果、同じレンジの社員のある程度の比率の人が部長になっているということになります。

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横一線の出世レース

このような形で、定年までの長期にわたって少しづつ社員がふるいにかけられていくシステムが、日本の昇進昇格システムだということです。
したがって、同期に比べて多少昇進昇格が遅れても、同じポストに追いついたら、その空上のポストに行くところでは、再度横一線の競争となります。

もちろん同期の中で1番に昇進昇格した人の方が有利ではあります。
しかし絶対ではありません。
例えば、課長に昇進するのは1年遅れたけれども、部長になるのは同じだったとか、あるいは逆転したとかいうことも充分あり得ます。

このように日本の会社では、新卒で入社をしたらヨーイドンで皆が社長を目指して競争しているという風な言い方をする人もいます。
社長を目指してるかどうかはともかくとして、かなりの年齢になるまで出世を目指している状態だとは言えますね。
そしてこれが社員のモチベーションになってきたことは確かです

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出世競争システムが機能する条件が崩れている

このシステムが機能する条件は2つあります。
1つは組織が拡大していて、ポストの数が十分に用意されているということです。
もう一つは、会社に入った人は皆、昇進昇格したいと思っているいうことです。

しかし今、この条件がくずれているという感じがします。

1つは、これかなり前から言われていることですけれども、成長の鈍化と社員の高齢化により、ポストに空きがなくなっていることがあげられます。
そのため、以前であれば課長や部長に昇進昇格する年齢に来ていても、ポストの空きがないためにそうならないということがおこっています。

2つめは出世したくないという人の増加。

その背景には---
・価値観の多様化
・残業代も含めた総月収でみるとそれほど賃金にの差がない
---といったことがあげられます。
そういったことから昇進昇格したくないと言う人が増えてきてしまってるんですね。
昇進しても、責任が重くなるばかりで、いいことなんてないよということですね

また終身雇用への危機感・不信感というのもあるかと思います。
以前は寄らば大樹ということで、よほどのことがなければ定年までは会社に勤めていられるだろうという安心感がありました。
しかしバブル崩壊やリーマンショックといった大きな経済変動を経て、どうもそうではなさそうだという、ある意味当たり前のことに日本の会社員も気づき始めました。
そして、いつリストラされるか分からないということが、現実味をもって感じられるようになったのですね。

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終身雇用、年功序列システムは、成果や貢献度がただちに賃金などに反映されるわけではなく、定年までの長期の愛大に帳尻があうというやり方です。
しかし、上記のようなことを背景に、今どれだけ会社に貢献しているのか、どれだけ成果を上げているのかといったことを、直ちに処遇に反映してほしいと考える人が増えてきています。

会社の視点で見ると、長期雇用が競争力の源泉であることは確かです。
会社独自のノウハウ、会社の文化や価値観が身に沁みつくには、ある程度長く勤めていることが必要です。
それが他社との差別化要因になります。

一方で、正社員という地位に安住してぶら下がっているだけの社員はやはり困るという思いもあると思います。

もっとも、そのようなぶら下がり社員を作ってきたのもまた会社でもあるわけですが。

これからの昇進・昇格管理、人材マネジメントのあり方

今ここで必要なのは、採用した人材をきちんと育て、その人たちを適切に評価処遇するということ、会社にいたいと思ってもらうという人材マネジメントの基本に帰るということでしょう。

これまで述べてきたこととの関係でいうと、まず大事なのは、ポストに着くことだけが全てではないという状況にすることです。
そのために必要なのが、人事の複線化です。
ポスト一辺倒というやり方は限界に来ています。
したがって、仕事そのものへのロイヤリティーを高めるような人材マネジメントの仕組みを作る必要があります。
それを前提に、社員一人一人実現したい価値、目指したいものこういったものを大事にし、できるだけすぐその思いを叶えてあげるような方向性が必要です。

これからの人事制度、賃金制度をどうするか

人材の活性化・戦力化、公平で納得性のある人事マネジメントにおいて人事評価制度は重要なポイントになります。
ヒューマンキャピタルは豊富な経験と専門性を元に、丁寧なヒアリングと綿密なミーティングをもってクライアント様に最適な賃金制度をアドバイスをさせていただきます。
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