ベアの「定率方式」と「定額方式」
ベア(ベースアップ)には「定率方式」と「定額方式」という2つの方式があります。
定率方式とは?
定率方式は、従業員の基本給に対して一定の割合を掛けて引き上げる方法です。例えば、基本給が月給30万円の従業員が、5%のベアを受ける場合、1.5万円が加算され、基本給は31.5万円になります。
定率方式のメリット
- 高所得者へのインセンティブ:高い基本給を持つ従業員には、より大きな昇給が適用されるため、モチベーションが高まることが期待できます。
- 経済変動への対応:インフレなどの経済変動に対して柔軟に対応しやすいです。
定率方式のデメリット
- コスト増:企業にとって高所得者が多い場合、総コストが大幅に増加する可能性があります。
- 公平性の問題:基本給が低い従業員に対しては、昇給額が小さくなるため、不公平感を感じる場合があります。
定額方式とは?
定額方式は、全従業員に対して同じ金額を加算する方法です。例えば、全従業員に一律で月給1万円のベアを適用する場合、基本給が30万円の従業員も20万円の従業員も、同じく1万円が加算されます。
定額方式のメリット
- 公平性の確保:全従業員が同じ金額の昇給を受けるため、基本給の高低にかかわらず公平感が保たれます。
- 予算管理の容易さ:企業にとって、昇給額が一定であるため、予算管理がしやすくなります。
定額方式のデメリット
- 高所得者へのインセンティブ減少:高い基本給を持つ従業員にとっては、昇給額が少ないため、モチベーションが低下する可能性があります。
- 労使交渉の困難:一律の金額が全従業員にとって適切であるかどうか、労使交渉が難航する場合があります。
ベアの方式を選ぶポイント
企業がベアの方式を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
- 従業員構成:高所得者が多い場合は定率方式、低所得者が多い場合は定額方式が適していることが多いです。
- 企業の財務状況:企業の予算や経済環境に応じて、どちらの方式が持続可能かを評価する必要があります。
- 従業員の士気:従業員のモチベーションや満足度を考慮し、どちらの方式がより効果的かを判断します。
- 労使関係:労働組合との関係性や交渉の難易度も考慮する必要があります。
ベアの定率方式と定額方式には、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。企業の状況や従業員の構成、労使関係などを総合的に考慮し、最適な方式を選択することが重要です。適切なベアの実施は、従業員のモチベーション向上や企業の成長に寄与するため、慎重な検討が求められます。
賃金体系の補正
体系補正もベアの一種と考えることができます。特に、特定の層の賃金を引き上げるために行われる賃金改定は、ベアの目的である給与の底上げや従業員のモチベーション向上に寄与するため、ベアの一環として理解することが妥当です。
体系補正とは
体系補正は、特定の層、例えば若手社員や中堅社員など、特定のグループに焦点を当てて賃金を引き上げる方法です。これにより、給与体系の不均衡を是正し、公平な賃金体系を実現することが目的とされています。
体系補正のメリット
- 若手社員の定着率向上:若手社員の賃金を引き上げることで、離職率を低減し、企業に長く勤めてもらうことが期待できます。
- 公正感の向上:特定の層の賃金が不公平に感じられる場合、その層をターゲットに補正することで、公平感を高めることができます。
- スキルアップの促進:若手社員や中堅社員の賃金を引き上げることで、スキルアップやキャリア形成への意欲を高めることができます。
体系補正のデメリット
- 他層の不満:特定の層だけが賃金補正を受けることで、他の層の従業員が不満を感じる可能性があります。
- コストの増加:特定層の賃金を大幅に引き上げることは、企業にとって大きなコスト増加をもたらすことがあります。
- 一時的な効果:補正が一時的なものに留まると、長期的なモチベーション向上には繋がらない可能性があります。
体系補正の適用例
- 若手社員のベースアップ:新卒や入社数年目の若手社員の給与を引き上げることで、生活の安定を図り、長期的なキャリア形成を支援します。
- 中堅社員の賃金調整:中堅社員のスキルや経験に見合った賃金が支払われていない場合、その層の賃金を補正します。
- 特定職種の賃金見直し:市場価値が上昇している特定の職種に対して賃金を補正し、他社への流出を防ぎます。
体系補正は、ベアの一環として特定の層の賃金を引き上げる有効な手段です。企業は、従業員全体のモチベーションを考慮しながら、特定の層に対する適切な補正を行うことで、バランスの取れた給与体系を構築することができます。体系補正を通じて、公正な賃金体系の実現と従業員の満足度向上を目指しましょう。
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