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就業規則の実際(22)~労働時間、休日、休暇(5)

休日の原則

会社は働く人に休日を与えなくてはなりません。
労働基準法で休日は次のように定められています。

(休日)
第36条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。

つまり休日は、「毎週1日以上、または4週4日以上」与えなくてはならないわけです。

「1週間」をいつからいつまでにするかは会社の自由ですが、就業規則などで特定しておかなくてはなりません。特定がない場合は、日曜日から土曜日までの暦週となります。
また、「4週間」については、起算日を決めておかなくてはなりません。

週1日の休日があれば、労基法違反とはなりません。

ただし、労基法は一方で、週の労働時間を40時間と定めています。
もし1日の労働時間が8時間だとすると、週2日休日がないと、労基法違反となりますので、注意が必要です。

なお、国民の祝日や年末年始等をどうするかは、会社の自由です。

 

法定休日・法定外休日

前述の通り、法が義務づけている休日は、「週1日または4週4日」です。
これを「法定休日」といいます。
法定休日に仕事をさせた場合は、割増賃金を支払わなくてはなりません。
(割増賃金については後述します)

法定休日以外の休日を、「法定外休日」といいます。
法定外休日に仕事をさせた場合も、賃金は支払わなくてはなりませんが、割増にする義務はありません。

このように、同じ休日でも、法定休日と法定外休日では、法律上の取り扱いが異なります。

では、週休2日の場合、法定休日をあらかじめ決めておく必要はあるのでしょうか?
法律は、法定休日の特定までは義務づけていませんので、その必要はありません。

したがって、次のような扱いが考えられます。

<パターン1>
・休日は毎週土・日とする。
・日曜日を法定休日とする。(したがって日曜日に仕事をした場合は3割5分の割増賃金)

<パターン2>
・休日は毎週土・日とするが、法定休日は特定しない。
・土・日とも出勤し、1週間休日がなかった場合は、休日出勤日のどちらか一方を法定休日労働とする。(どちらにするかは会社の決め)

 

休日は暦日が原則

休日は、暦日が原則です。
ただし、交替制勤務など、勤務が暦日をまたがる場合は、継続24時間の休日という方法でもOKです。就業規則などで、交替制勤務のことをきちんと定める必要があります。

 

休日は特定しなければならない?

労基法は、休日の特定までは求めていません。ですから、「休日は週2日とする」というような決め方でも問題ありません。
しかし、厚生労働省の通達にも、「特定することが法の趣旨に沿う」とあります。
「休日は毎週土曜日、日曜日とする」というように、日を特定するのが望ましいですね。

 

休日を振替える場合は?

休日振替とは、休日と定められている日を勤務日とし、別の日を休日とすることです。
就業規則に、休日の振替をすることがある旨を定めておく必要があります。
また、休日振替すべき具体的事由と、振り替えるべき日を具体的に規定するほうが望ましいとされています。ただ、現実に「具体的な事由」を定めるのは、難しいことも多いでしょう。「業務の都合により」という定め方にならざるを得ないかもしれません。

休日を振り替えた場合、もともとの休日は勤務日となり、「休日出勤」とはなりません。従って、割増賃金を支払う必要はありません。

ただし、その場合でも、1週1日または4週4日の休日は確保する必要があります。
振替後の休日をいつにするかについて、労基法上の決まりはありませ。4週4日の枠内であれば、いつでもいいのですが、できるだけ近い日にすることが望ましいですね。

 

代休とは?休日振替との違いは?

休日振替と似ていますが、休日振替の場合は、元々の休日が勤務日に転換されるので、その日の勤務は休日勤務とはなりません。

代休の場合は、元々休日だった日はあくまでも「休日」です。ですから、この日に勤務すれば、それは「休日出勤」となり、割増賃金の対象になります。

代休は義務ではありません。会社の「決め」です。
与え方についても、会社が強制的に与える(休ませる)、本人の請求による、という2パターンがあります。
また、休日出勤時間が、一定時間以上になったら与えるという方法もあります。

 

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2019年01月16日

働き方改革への取組(17)~労働時間短縮への取組⑯

働き方改革法制の目玉になっている時間外労働の抑制(=時間外の上限時間の設定)に、会社は次の3つの側面から対応を考える必要があります。

①労働時間管理
②労働時間制度
③生産性向上

今回はこのうち、生産性向上について触れたいと思います。

 

生産性向上

働き方改革の目的は、生産性の向上にあります。
労働時間短縮はもとより、ワークライフバランスの実現、創造性の向上も、突き詰めていけば生産性が根っこになります。

生産性向上は3つの観点から考えます。

①業務のやり方を効率化できないか
②業務と業務の流れを効率化できないか。ボトルネックはないか
③そもそもその業務は必要か

肝心なのはゼロベースで考えることです。

たとえば、業務のムダの象徴としてヤリ玉にあがる会議。
「その会議は必要か」という議論をしますが、「必要性」というのはひねり出せばいくらでも出てきます。
「その会議がなくなったら困ることがあるのか」と考えるべきです。

また、会議そのものは必要としても、参加メンバーは適当かという目線も大事です。
「この案件は○○部も無関係ではないので、メンバーに入れよう」という発想が実に多いというのが私の実感です。そうして、一言も発しない人が過半を占めるという奇妙な会議があちこちで開かれるのです。


私は業務時間中は一切のムダがあってはならないと言うつもりはありません。
疲れたり煮詰まったりしたときはブレーク時間も必要です。

というか、このような時間はムダ時間ではありません。

本当にムダなのは、仕事をするでもなく、かといってリフレッシュするでもない、義務的にいるだけの時間、待たされているだけの時間です。無意味な業務をやらされている時間もそれになりますね。

そのような時間が実は結構多い。

こういう時間を失くしていくことが肝心かと。

 

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2019年01月16日

就業規則の実際(21)~労働時間、休日、休暇(4)

休憩時間の長さ

労働基準法による休憩時間の定めは次の通りです。
・労働時間が6時間を超える場合は45分以上
・労働時間が8時間を超える場合は1時間以上

所定労働時間が8時間以下の場合は、最低45分の休憩が必要です。
残業などで労働時間が8時間を超える場合は、15分の休憩を追加しなくてはいけません。

また、所定労働時間が6時間以下の場合は、休憩時間を与える法的義務はありません。
とは言え、現実に、仕事が4時間、5時間と連続すると、疲労もたまります。生産性は下がるでしょうし、ミスや事故にもつながりかねません。
労働時間が6時間以下でも、それなりの休憩時間を与えることが望ましいでしょう。

 

休憩の与え方

1)勤務時間の途中に与えること

休憩時間は、勤務時間の途中に与えなくてはいけません。
「始業9時、終業17時、休憩17時~17時45分」というのはダメです。

2)原則として一斉に与えること

休憩は一斉に与えることが原則です。後で書きますが、「休憩の自由利用」を担保するという趣旨です。

ただ、例外が2つあります。
・労使協定
・労基法第40条

労使協定

労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数代表者との間で書面協定を結べば、一斉に付与しなくてもOKです。
協定すべき事項は
・休憩を一斉に与えない(分散して与える)従業員の範囲
・分散して与える「与え方」
です。

労基法第40条

一定の事業場は、一斉休憩の原則が適用されません。サービス業など、全員が一斉に休憩でいなくなってしまうと、お客さんに不便な思いをさせてしまうような事業です。このようなところは、就業規則で休憩の与え方を定めます。
該当する事業は、次の通りです。
・旅客、貨物の運送事業
・物品の販売または理容の事業
・金融、保険等または広告の事業
・映画、演劇、その他興業事業
・郵便、電信、電話事業
・保健、衛生の事業
・旅館、飲食店、娯楽場
・官公署

 

休憩は自由利用が原則

休憩時間は、従業員に自由に利用させなくてはなりません。
休憩時間中に電話当番をさせたり、来客が来た場合は対応させたりした場合はどうなるのでしょうか。

「電話がかかってこなければ休憩していられるのだから、問題ない」
「実際に電話に出たり、来客の対応をしていた時間の分だけ休憩時間を伸ばせば良い」
――いずれも「×」です。
このような時間は、いつでも業務に対応できるように待機している「手待ち時間」ということになり、労働時間となります。

それなら、休憩時間中は、法に触れない限り何をしていても良く、会社はそれに対して何もできないのでしょうか。
いくらなんでも、そんなことはありません。
事業場の規律保持上、必要な制限を加えることはできます。

・外出を許可制としても、事業場内で自由に休息できればOKです。
・休憩時間中の、ビラ配布などの政治活動に制限を加えることができるか否かについては、企業秩序を乱す行為かどうか、労働協約などがどうなっているか、などによって判例が分かれいています。
ケース・バイ・ケースとしか言いようがないのですが、程度問題ということになるのでしょう。

 

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2019年01月15日

就業規則の実際(20)~労働時間、休日、休暇(3)

労働時間とは?

就業規則には労働時間に関する事項を必ず記載しなくてはなりませんが、そもそも「労働時間」とは何でしょうか?
「働いている時間のことでしょう?」…確かにその通りです。
でも、この「働いている時間」の範囲をめぐって、これまで実に多くの紛争があったのです。

たとえば、仕事を始める前の準備作業は労働時間に入るのでしょうか?
仕事をするためにの準備作業なのだから、労働時間に入るという考え方、仕事そのものではないのだから労働時間にはならないという考え方、それぞれ一理あります。
それでは、出張中の移動時間はどうでしょう?
出張でなくても、外回りの営業マンが得意先と得意先の間を移動している間は?
勤務の間の仮眠時間は?
他にも色々なケースがありますね。

こういうことをしっかり把握しておきましょう。
そうすれば、次のステップに進めます。

「それでは当社はどんな労働時間管理をするのがいいのだろう?」
これを考えるには、そもそも労働時間とは何かということを、しっかり押さえておかなくてはなりません。

労働時間の定義を、社会保険労務士会編の「社会保険労務ハンドブック」(中央経済社)から引用します。

「労働時間とは、休憩時間を除いた実働時間をさし、休憩時間をも含めた拘束時間と異なる。また、実働時間とは、労働者が現実に労働に従事している時間だけでなく、労働者の労働力がなんらかの形で使用者の指揮命令下におかれている時間をいい、したがっていわゆる手待時間(たとえば販売店の従業員が買物客のくるのを店内で待っている時間)は、当然労働時間に含まれる」

この「指揮命令下」というのも、実務上大切な概念です。

ここではっきりしていることは、何かしら手を動かしたり、会議で発言している時間だけが労働時間ではないということです。
仕事をしないでぼ~っとしていたからといって、その時間を勤務と認めず、時間相当分の賃金を差し引くことは、労働時間の定義に限って言えば、やってはいけません。

これは、職場の労務管理や懲戒など、別の問題としてとらえる必要があるということです。

 

労働時間に関する労働基準法の規定

労働時間は、1日8時間、1週40時間を超えてはならないと労働基準法で定められています。前回お話しした通り、この「8時間」とか「40時間」には休憩時間は含まれません。


1週」は、通常は日曜日~土曜日の「暦週」を意味しますが、就業規則で、別の決め方もできます。ただ、特別な必要性がなければ、暦週を使うのがいいでしょう。

「1日」は、午前0時から午後12時までの暦日を指します。

それでは、残業が長引いて、午後12時を過ぎた場合などはどうなるのでしょうか。
この場合、暦日をまたがっていても1勤務として扱います。

それでは、今度は、徹夜になってしまった場合はどうなるのか?
この場合は、徹夜明けの日の始業時刻までを、前日からの勤務時間としてカウントすることになります。

 

労働時間になる例、ならない例

それでは具体的に、労働時間になる・ならないを、これまでの通達や判例から拾ってみます。

<労働時間になる例>
・昼休み中の来客当番
・黙示の指示による労働時間
 たとえば、管理者が部下に、明確に残業を指示していなくても、部下が法定労働時間を超えて仕事をし、それを黙認していた場合は、労働時間(残業時間)となります。
・終業時間外の教育訓練
自由参加のものであれば、労働時間にはなりません。
・着替え時間
着用を義務づけられた作業服などを、事業所内で着替える時間は労働時間になります。
・仮眠時間

<労働時間にならない例>
・出張先への往復に要した時間
出張中の移動時間は、労働時間になります。
・趣味の会の活動

 

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2019年01月15日

働き方改革への取組(16)~労働時間短縮への取組⑮

働き方改革法制の目玉になっている時間外労働の抑制(=時間外の上限時間の設定)に、会社は次の3つの側面から対応を考える必要があります。

①労働時間管理
②労働時間制度
③生産性向上

今回はこのうち、労働時間制度について触れたいと思います。

 

労働時間制度

労働基準法制定当時に一般的だった、全員が一斉に仕事を始め、一斉に終わるという業務形態も、いまではだいぶ変わってきました。
それに対応して、労働時間制度も次のようにいろいろなバリエーションが作られています。

・変形労働時間制(1年単位、1ヶ月単位、1週単位)
・フレックスタイム制
・事業場外みなし労働時間制
・裁量労働制(専門業務型、企画業務型)

フレックスタイム制は今回の法改正で多少は柔軟な運用ができるようになりました。
また、大騒ぎになった高度プロフェッショナル制も、旧来と異なる労働時間制と言えます。

ポイントは、全社で同じ制度にする必要はないということです。
まぁ、当たり前ではありますが。

部署単位、業務内容単位、職種単位、階層・ランク単位でどのようなやり方が最も合理的かを吟味するのがいいですね。

 

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2019年01月15日

働き方改革への取組(15)~労働時間短縮への取組⑭

時間外の上限規制は、「働き方」改革というより「働かせ方」改革といった方が適切かもしれません。
まぁそれを言ったら、今後お話ししていく他の事項もそうなりますが。
ただ、時間外規制はその色合いがより強いのではないかという気がします。

いずれにしても、会社はこの法改正を機に、従業員の活用、すなわち人材マネジメントのあり方を見直すのがいいですね。

 

働き方見直しの「3つの視点」

見直しは次の「3つの視点」から考えます。

①労働時間管理
②労働時間制度
③生産性向上

 

労働時間管理

労働時間管理(勤怠管理ともいいます)をどうするかはとても大事な問題です。

労働時間管理のあり方は次のように、人材活用・労務管理のさまざまな面に影響を及ぼすからです。

・働く人の生産性や創造性
・ムダな残業、ダラダラ残業
・働く人の心身の健康
・労務コンプライアンス、訴訟リスク

今回の一連の法改正で、一部の例外を除き、時間外労働・休日労働に天井が設けられました。
そのため、きめ細かい労働時間管理が求められます。

労働時間管理は、2つの側面から設計するのがいいですね。

①入り口の管理
・出退勤時刻と始業・終業時刻の管理
※この両者は全く異なるものです。一緒くたになっている会社が少なくありませんが、区別して管理すべきです。
・時間外労働の承認手続

②実績の管理
・時間外実績の把握
・長時間労働の要因分析、解消策検討
※時間外実績の集計を月半ばで行うようにするのがベター

 

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2019年01月10日

就業規則の実際(19)~労働時間、休日、休暇(2)

拘束時間、労働時間、休憩時間

就業規則には、「始業時刻」と「終業時刻」を定めます。
では、「労働時間」とは、始業時刻から終業時刻までの時間を指すのでしょうか?

そうではありませんね。
始業と終業の間には、「休憩時間」があります。
この時間は労働時間ではありません。
つまり、始業時刻から終業時刻までの時間は「拘束時間」。
拘束時間から休憩時間を差し引いたのが「労働時間」になるのです。

この関係を整理すると、次のようになります。

拘束時間=終業時刻-始業時刻
労働時間=拘束時間-休憩時間

たとえば、始業9:00、終業18:00、休憩12:00~13:00の1時間だとすると、拘束時間は9:00~18:00の9時間、労働時間は拘束時間から1時間を差し引いた8時間ということになります。

 

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2019年01月10日

就業規則の実際(18)~労働時間、休日、休暇(1)

労働時間の始点と終点

労働時間はどこからどこまでか?
分かりきっているようで、意外とはっきりしないのがこの点です。

たとえば、始業時刻前の準備や、業務終了後の後片付けは、労働時間に入るのか入らないのか?
着替えや身支度は?


判例や行政解釈などからは、次のよ点が判断基準になると言えます。

・使用者の命令があるか
・法令で義務づけられているか
・黙示的な命令があるか
・当該作業を行うために必然的なものか
・当該作業を行うに際して通常必要とされるものか


労働者には、業務に必要な状態で労務を提供する義務があります。
たとえば、自宅でスーツを着用する時間は、労働時間にはなりません。
したがって、会社に着いてから制服に着替える、安全靴・ヘルメットを着用する、机の上を整理するなどの準備作業は、労働時間とはなりません。
しかし、こうした準備作業が会社の指揮命令下に、集団的組織的に行われる場合は、労働時間となります。

 

就業規則に明記する

現実の場面では、労働時間に入るかどうか、判断に迷うことも少なくありません。
こうした混乱を避けるために、就業規則に労働時間の定義をしておくことをお勧めします。

 

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2019年01月10日

就業規則の実際(16)~服務(6)

パソコン、インターネット等の私的利用の禁止

会社のパソコン、ネットワークは、業務のために用意された、会社の資産です。
従業員はこれらを業務以外の目的で使用することはできません。

また、従業員は、勤務時間中は職務専念義務を負っています。
勤務時間中に私的なメールを送受信したり、業務には関係のないWebサイトを見ることは、職務専念義務違反となります。

さらに、そのような行為から、社内システムがウィルスに汚染されたり、外部に損害を与えて賠償責任を取らされるといったリスクもあります。

したがって、パソコン、インターネット等の私的利用を禁止することは、当然できますし、しなくてはなりません。

 

会社は従業員のインターネット閲覧や電子メールの私的利用をチェックすることはできるか

結論から言うと、可能です。
ただし、個人情報保護、プライバシー侵害の問題がからんできますので、注意が必要です。

この点について済産業省の「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を
対象とするガイドライン」は、以下のように定めています。

①モニタリングの目的、すなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、社内規程に定めるとともに、従業者に明示すること
②モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること
③モニタリングを実施する場合には、あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程を策定するものとし、事前に社内に徹底すること
④モニタリングの実施状況については、適正に行われているか監督、または確認を行うこと


以上から、次の点に留意してチェックを行えばいいでしょう。

・チェック目的が合理的であること
あくまでも私的利用の監視(防止)を目的に行わなくてはなりません。
個人のプライベート情報の収集などにモニタリング結果を利用してはなりません。

・責任者とその権限を定めること

・就業規則に明記し、事前に社内に周知徹底すること

 

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2019年01月09日

働き方改革への取組(14)~労働時間短縮への取組⑬

労働時間の上限規制について、改正法ではどうなるのかをお話してきました。

いろいろと多岐にわたっていますが、整理すると次の2つが柱になっています。

①36協定による限度時間が法律の条文に「格上げ」され、遵守義務となった
②36協定の特別条項に上限規制が新設された

①の限度時間そのものはこれまでとほぼ同じです。
その点では、実務的な影響はそれほど大きくないと思われます。
しかし、これまでが「基準に適合したものとなるようにしなければならない」とされていたのが、法改正で「限度時間を超えない時間に限る」と、限度時間が遵守義務であることを明確にうたっています。

位置づけが大きく異なるのです。
ここは十分念頭におく必要があります。

一方、②の上限規制の新設は、既に特別条項付き36協定を締結している会社、これから締結しようとしている会社には影響が大きいと思われます。

ここでいたっている「1ヶ月100時間未満」と「2ヶ月ないし6ヶ月の平均80時間以内」という数字そのものは、労災保険の「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」、いわゆる「過労死認定基準」にでてくる数字です。

そのため、この時間を超えて時間外をさせ、その結果働く人が健康を害したり、最悪死に至ったような場合、会社の責任度合いが重くなるリスクが高くなります。

そのため、これまでも特別条項付きの36協定を結ぶ場合、この過労死認定基準を念頭に置いていた会社も多いと思います。

しかし、労働基準法に明確に規定された意味は大きいですね。
この時間を超えたら、労災事故等の有無にかかわらずただちに法違反となるわけですから。

 

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2019年01月09日

就業規則の実際(15)~服務(5)

兼業禁止規定はどこまで有効か?

兼業禁止規定を設けている会社は少なくありません。

会社の従業員は、会社に対して「職務専念義務」を負います。
つまり、会社の業務に専念し、誠実に業務を遂行するということです。

その点から、会社の業務以外の業務に就く、いわゆる兼業を禁止することも、妥当なことと言えます。

ただ、このような規定を、プライベートな時間にまで及ぼすことができるかという問題があります。
上記の職務専念義務が対象になるのは、原則として就業時間中のことです。
就業時間外は、本人の自由な時間です。


しかし、プライベートな時間に対して、会社の規制は一切及ぶことはないのか?
あるいは、及ぼすことはできないのか?

そのようなことはありません。

この点は、「服務(2)」のパートでもお話した通り、会社の名誉を傷つけるような行為は、私生活上といえども禁止できます。
飲酒運転も同様です。(「服務(3)」)

では、兼業はどうなのでしょうか?

この点、判例は、会社の信用などに与える影響や本業に与える影響を判断基準にしています。

「労働者がその自由なる時間を精神的肉体的疲労回復のため適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労務提供のための基礎的条件をなすものであるから、使用者としても労働者の自由な時間の利用に関心をもたざるをえず、また、兼業の内容によっては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、対面が傷つけられる場合もありうるので、従業員の兼業の諾否について、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮した上で会社の承諾にかからしむる旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがたい」

つまり兼業制限が有効とされるのは、次のような場合になります。

・兼業が不正な競業にあたる場合
・働き過ぎによって健康を害するおそれがある場合
・兼業の態様が会社の社会的信用を傷つける場合


したがって、個々の事情にかかわらず、あらゆる兼業を禁止するというわけにはいきません。

 

会社の許可を必要とするということは?

兼業が問題ないかどうかを、従業員が勝手に判断していいものではありません。
会社にどのような影響があるかを、会社が判断する必要があります。

したがって、兼業を会社の許可制にするという規定を設けるのは有効です。

 

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2019年01月08日

就業規則の実際(14)~服務(4)

企業秘密の保護

技術情報、新製品情報、アライアンス情報、ノウハウ情報など、企業秘密は多岐に渡ります。
企業秘密の保持は、会社の存亡に響く重要事項です。

PC、インターネットが一般化したデジタル社会の今日、会社は情報保護に、最新の注意を払わなくてはなりません。

就業規則とは別に、情報保護規定を設けることも、検討した方がいいでしょう。

 

関連法制との関係

まず上げられるのが「個人情報保護法」、そして、同法施行に伴い厚生労働省が「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」を出しています。

また、不正競争防止法では営業秘密を、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義し、それを不正の競業その他の不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、または開示する行為を不正競争としています。
同法は、営業秘密としての要件を具備し、かつ不正の利益を得る目的がある行為を禁止しています。

 

在職中は秘密保持義務を当然に負う

会社の従業員が、企業秘密を保持しなくてはならないのは、当然のことと言えます。
これは、仮に就業規則などに明記されていなくても、労働契約上当然に発生する、「誠実義務」のひとつと言っていいでしょう。

判例でも、「労働者は労働契約に伴う付随義務として、信義則上、使用者の利益をことさら害するような行為を避けるべき義務を負うが、その1つとして使用者の業務上の秘密を漏らさないとの義務を負うものと解せられる」として、労働者の守秘義務を労働契約に当然に付随する義務と定義しています。

 

退職後の秘密保持義務、競業避止義務

ここは議論のあるところです。

退職後も、どこまでその人は守秘義務を負うのか?
この義務が無制限に存在するのだとすると、労働者の自由を不当に制約することになりかねません。

これについては、会社と本人との間に、秘密保持に関する特別な合意がある場合に、退職後の秘密保持義務が成立すると考えられます。

また、競業避止義務とは、競合関係にある会社への就職をしないという義務です。
社員がライバル会社に転職して、身につけたノウハウ、知識、情報などを活用されるのは、会社としては避けたいところです。

しかし、これも、職業選択の自由との関係もあり、制約があります。
やはり、特別な合意がある場合に成立すると考えていいでしょう。
そして具体的な判断にあたっては、次のような要素が考慮に入れられます。

・労働者の地位
・競業制限の対象期間、地域などからみて労働者の職業選択の自由を不当に制限していないか
・競業制限に対する代償措置


では、退職後の守秘義務、競業避止義務を有効にするためには、何をしたらいいのでしょうか?

まずひとつは、就業規則に、退職後の守秘義務、競業避止義務に関する定めを置くことです。
期間、地域など、できるだけ具体的なものにした方がいいでしょう。
ただ、業務内容、労働者の地位によって、一概に定義できないこともあるでしょうから、その点も考慮に入れた定め方をします。

もうひとつは、退職時に誓約書を書いてもらうことです。
これは個別的なものになりますから、就業規則よりも具体的にします。

 

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2019年01月08日

働き方改革への取組(13)~労働時間短縮への取組⑫

時間外限度規制等の施行日

ここまでお話ししてきた事項の施行日は平成31年(2019年)4月1日です。

ただし、中小企業については1年後の平成32年(2020年)4月1日となっています。

※今回の法改正は、内容によって施行日が異なります。
どこかのタイミングでひとまとめにしますが、読者の皆様も注意してください。

 

60時間を超える時間外割増率にかかる中小企業の猶予措置がなくなる

会社は時間外労働をさせたときは、割増賃金を支払わなくてはなりません。
時間外手当とか残業手当、残業代と一般に言われているものですね。

割増賃金の「割増率」は、次のように労働基準法で定められています。

・時間外労働:25%以上
・深夜労働:25%以上
・休日労働:35%以上

また、時間外労働が60時間を超えた場合は、割増率が50%となります。
これは平成22年4月1日施行の改正労働基準法。既にそうなっているということですね。

ただし、中小企業については適用猶予となっていました。
これが今回の法改正で撤廃されます。

猶予措置がなくなるのは平成35年(2023年)4月1日です。
中小企業は要注意ですね。

 

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2019年01月08日

就業規則の実際(13)~服務(3)

飲酒運転への規制強化を図る会社が増えている

就業規則に、飲酒運転に関する規制を入れる会社が増えています。

飲酒運転に起因する悲惨な事故が後を絶たない中、飲酒運転に対する社会の目もかつてないほど厳しくなっています。

そのような社会的情勢にあって、会社の従業員が飲酒運転で事故を起こした場合、会社の信用や名誉に与える影響は、計り知れないものがあるでしょう。

会社が従業員の飲酒運転に対する取締りを強化するのは、企業の社会的責任という点からも、当然のことと言えます。

 

就業中の飲酒運転

これは当然禁止されます。
飲酒運転に限らず、就業中に酒気帯び状態でいること自体、当然禁止行為となります。

ただ、飲酒運転・酒気帯び運転禁止を就業規則で明確にすることも考えられます。
特に、業務で乗用車などを使うような場合、明記した方がベターです。

 

私生活における飲酒運転

私生活上でも、会社の名誉や信用を傷つける行為を禁止することはできます。
したがって、「常に品位を保ち、私生活上も含めて会社の名誉を傷つける行為をしないこと」というような規定だけでも、もし従業員が飲酒運転をした場合に処罰をする根拠になります。

しかし、より明確に飲酒運転を禁止する条文を設け、飲酒運転に対して会社は厳罰をもって臨むことを示すべきでしょう。

 

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2019年01月07日

就業規則の実際(12)~服務(2)

私生活に対する会社の規制はどこまで可能か

私生活は、その人の自由に属することです。
これは当然のこと。

しかし、私生活上のことでも、会社の信用や秩序に悪影響を及ぼすようなことをされては困ります。
したがって、そのような行為を規制することは可能です。

では、このような場合に、私生活上の行為に対する規制は有効なのでしょうか。

判例は次のように指摘しています。

「営利を目的とする会社がその名誉、信用その他相当の社会的評価を維持することは、会社の存立ないし事業の運営にとって不可欠であるから、会社の社会的評価に重大な悪影響を与えるような従業員の行為については、職場外でされた職務遂行に関係のないものであっても、これに対して会社の規制を及ぼしうることは当然認められなければならない」(日本鋼管事件・最高裁・昭和49年3月15日)

 

「名誉を傷つける行為」とは?

どのような場合に、「名誉を傷つけた」と言えるのでしょうか?

再び、判例を引用します。

「従業員の不名誉な行為が会社の対面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない」


たとえば、法令違反でも…
・駐車違反をしてしまった
・公共の器物を破損してしまった
・公共の器物を破損し、そのことが新聞に報道された
…それぞれ、どう考えればいいでしょうか?

「駐車違反ぐらいなら…」
そう考える人は多いと思います。
しかし、そう言い切っていいでしょうか?
その人が、もし交通警察官だったら?
まぁ、これは極端な例ですが…。会社員ではないし。
ただ言いたいのは、行為それ自体を単独で取り上げても、判断は難しいということなのです。

判例にもある通り、次の諸般の事情を考慮して、総合判断することになります。

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2019年01月07日

働き方改革への取組(11)~労働時間短縮への取組⑩

時間外限度時間、絶対的上限規制には例外がある

ここまで時間外限度時間(月45時間以内など)、絶対的上限規制(特別条項を結んだ場合の上限)について解説してきましたが、次の事業・業務には例外・猶予措置があります。

・建設の事業
・自動車運転の業務
・医師
・鹿児島県、沖縄県における砂糖製造業
・新技術・新商品等の研究開発業務

 

◆建設の事業の猶予措置

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

◆自動車運転の業務の猶予措置

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

5年経過後は次のようになります。

・時間外限度時間は適用されます。
・時間外の絶対的上限は引き続き適用除外となりますが、1年の時間外労働の上限は960時間と緩和されています。(通常は720時間)

◆医師

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

◆鹿児島県、沖縄県における砂糖製造業

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は絶対的上限規制のうち、「1ヶ月100時間未満」と「2ヶ月ないし6ヶ月の平均80時間以内」は適用されません。

◆新技術・新商品等の研究開発業務

時間外の限度時間規制は適用されません。(絶対的上限規制は適用されます)。

また指針には次のような記載がありますので留意してください。」

・時間を定めるに当たっては、限度時間を勘案することが望ましいことに留意しなければならない
・限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を定めるように努めなければならない。

 

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2019年01月07日

働き方改革への取組(12)~労働時間短縮への取組⑪

36協定の特別条項の内容は

特別条項の内容を改めてお示しします。

① 限度時間を超えて労働させる事由
② 限度時間を超えて労働させたときの割増賃金率
③ 特別条項発動の手続
④ 健康・福祉確保措置

このうち①~③はこれまでと同じです。

④の「健康・福祉確保措置」が今回新たに定められた事項ですね。
どのような措置を取るかは労使で決めることになりますが、指針は、次に掲げるもののうちから協定することが望ましいとしています。

1)面接指導:労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。
2)深夜労働の抑制:法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること。
3)勤務間インターバル:終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。
4)特別休暇:労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。
5)健康診断:労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。
6)連続休暇:年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること。
7)相談窓口:心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。
8)配置転換:労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。
9)保健指導等:必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受
けさせること。

 

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2018年12月27日

就業規則の実際(11)~服務(1)

服務とは何か?

 

就業規則には、ほぼ例外なく「服務」に関する規定が入っています。
会社によっては、別規則として「服務規程」を設けている場合もあります。

働く人と会社は、労働契約、つまり労働者は労働を提供し、会社はその対価として賃金を支払うという「有償双務契約」を結びます。

労働契約関係に入ると、労働者は会社の指揮命令下に入り、労働時間中は職務に専念する義務を負います。

このような従業員の職務専念義務を規定化したのが、服務規定です。

また、私生活上でも、会社の従業員として守るべき義務があります。
たとえば、会社の信用を害するような行為をしてはならないといったことです。
このようなことも、服務規程の中で規定します。

つまり従業員としての身分に伴い発生する義務を規定したものと言っていいでしょう。

 

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2018年12月27日

就業規則の実際(10)~採用(7)~試用期間(3)

試用期間の延長について

試用期間が満了した場合、会社は次のいずれかの判断をします。
1)正式採用する
2)本採用拒否とする(留保解約権の行使、つまり解雇)

ただ、こんな場合どうするか?

・能力や勤務態度など、従業員としての適格性に疑問符がつく
・しかし、教育指導によっては改まる可能性も残されている
・見所もあるので、もう少し様子を見たい

こういう場合、試用期間を延長するという方法があります。
ただ、このような手を、会社は自由に取れるわけではありません。

試用期間の延長が許されるには、就業規則などに延長規定があり、かつ、その延長にが合理的な理由があることが必要です。

また、延長する場合も、期間を区切る必要があります。
そして、不当に長い期間とすることは許されません。

 

試用期間と勤続年数

試用期間は勤続年数にカウントするのでしょうか?

年次有給休暇の発生要件としての勤続期間を見る場合、試用期間も含めなくてはなりません。
ただし、退職金や永年勤続表彰など、会社として独自に定める制度については、自由に決めて差し支えありません。

なお社会保険等は、試用期間中でも加入させなくてはなりません。

 

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2018年12月27日

働き方改革への取組(10)~労働時間短縮への取組⑨

時間外限度時間、絶対的上限規制には例外がある

ここまで時間外限度時間(月45時間以内など)、絶対的上限規制(特別条項を結んだ場合の上限)について解説してきましたが、次の事業・業務には例外・猶予措置があります。

・建設の事業
・自動車運転の業務
・医師
・鹿児島県、沖縄県における砂糖製造業
・新技術・新商品等の研究開発業務

◆建設の事業の猶予措置

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

◆自動車運転の業務の猶予措置

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

5年経過後は次のようになります。

・時間外限度時間は適用されます。
・時間外の絶対的上限は引き続き適用除外となりますが、1年の時間外労働の上限は960時間と緩和されています。(通常は720時間)

◆医師

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は時間外限度時間、絶対的上限いずれも適用されません。

◆鹿児島県、沖縄県における砂糖製造業

改正法施行5年間(平成36年3月31日まで)は絶対的上限規制のうち、「1ヶ月100時間未満」と「2ヶ月ないし6ヶ月の平均80時間以内」は適用されません。

◆新技術・新商品等の研究開発業務

時間外の限度時間規制は適用されません。(絶対的上限規制は適用されます)。

また指針には次のような記載がありますので留意してください。」

・時間を定めるに当たっては、限度時間を勘案することが望ましいことに留意しなければならない
・限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を定めるように努めなければならない。

 

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2018年12月26日

就業規則の実際(9)~採用(6)~試用期間(2)

試用期間の長さはどのぐらい?

試用期間は、あらかじめ期間を定めなければなりません。

この期間は、前回お話した通り、「解約権留保付の労働契約」期間。
働く人にとっては、不安定な期間です。

そのため、「従業員としての適格性を判断できるまでの期間とする」というような、終期のはっきりしない定めは許されません。

では期間はどのぐらいにするか?
これに関する法律上の規制はありません。
ただ、上記の通り、試用期間というのは働く人にとっては不安定な期間ですから、それを不当に長くするのは許されないと考えていいでしょう。

 

労働基準法との関係

同法第21条には、
「前条の規定(解雇予告)は、次の各号の1に該当する労働者については適用しない。但し、(中略)第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、この限りでない。
(1)日日雇い入れられる者
(2)2カ月以内の期間を定めて使用される者
(3)季節的業務に4月以内の期間を定めて使用される者
(4)試の使用期間中の者

--こう定められています。

この「第4号」が、試用期間中の従業員を指すのですが、この条文を見て、「試用期間は14日以内でなくてはならない」とか、「14日を超えたら試用期間満了後の本採用拒否はできない」と思っている方がいますが、これは誤解です。

ここで言っているのは、あくまでも、「解雇予告または解雇予告手当が必要かどうか」です。
つまり、14日を超えたら、試用期間であっても解雇予告(または解雇予告手当)が必要だと言っているだけのことなのです。

 

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2018年12月26日

就業規則の実際(8)~採用(5)~試用期間(1)

試用期間とは?

従業員を採用するときは、筆記試験、面接など、さまざまな選考試験を行い、適格と判断できる人を採用します。

しかし、短期間の採用試験だけでは、ほんとうに従業員として適格かどうかは分かりません。

従業員としての適格性を判断するためには、実際に仕事をさせてみるしかありません。
そのために、紹介予定派遣や、入社当初は有期雇用とするといった方法をとる会社もあります。

ただ、それよりも一般的なのが、入社当初の一定期間を「試用期間」、つまり、試みに用いる期間とし、その期間中の勤務態度、能力、適性などを評価して正式採用とするかどうかを判断するという方法です。

もしこの評価の結果、従業員として不適格であると判断されれば、本採用拒否ということになります。

このような制度を設ける場合、就業規則に試用期間を設ける旨、期間、不適格の場合の取扱などを定めます。

 

試用期間の法的位置づけは?

試用期間は、「解約権留保付きの労働契約が成立」しているとされます。
つまり、「試用期間中に従業員としての適格性を判定し、試用期間の試用の結果、不適当と判断されたときには労働契約を解約しうるとの留保がなされている」ということです。

採用内定と、あまり変わらないように見えますが、試用期間は既に雇用関係に入っているという点が、内定とは決定的に異なります。
そのため、試用期間終了後の本採用拒否は、「解雇」。
ここが決定的に異なりますし、その分、使用期間満了後の本採用拒否は、採用内定取消よりハードルが高いと言っていいでしょう。

したがって、試用期間中や終了後の本採用拒否は、解雇にあたります。
そのため、14日以内の場合を除き、30日以上の解雇予告または平均賃金30日分以上の解雇予告手当の支払が必要となります。

 

それでは、「本採用拒否」はどんな場合にできるのでしょうか?

広い解雇の自由が認めらる。

留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当である」

--としています。

1)客観的に合理的な理由が存在すること
2)社会通念上相当であること

この2つが必要だということですね。

 

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2018年12月26日

働き方改革への取組(9)~労働時間短縮への取組⑧

これからの人事制度を、働き方改革法制を踏まえて考えていこうというシリーズ、いまは労働時間・残業時間規制についてお話ししています。

 

時間外労働にかかる規制を整理すると

会社が従業員に時間外労働を適法に命じるためには、次の要件を満たしていなくてはなりません。

① 36協定を締結し、就業規則に時間外を命じる旨が定めてある。
② 協定に定める時間外時間は限度時間以内になっている。
③ ②の限度時間を超えることがある場合は「特別条項」を36協定に定めている。
④ ③の場合でも、時間外は「絶対的上限」の範囲内である。

 

36協定の締結について指針が出されています

36協定はこれまで、時間外労働の抑制になっていないとか、形骸化しているといった批判がされていました。

私見ですが、このことが裁量労働制などの柔軟な労働時間制度を普及させる足枷になっているように思います。
「時間外労働が事実上の青天井になっている状況で労働時間規制を緩めたら、さらに酷いことになってしまう」というわけです。
生産性を上げ、競争力を高めていくうえで、新しい働き方の推進は必須だと思いますが、長時間労働の解消はその前提条件になるのです。

この問題はまた、別の機会にじっくりと考えてみたいと思います。

さて、上記の問題認識を受けて、今回の法改正に伴い「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」と題する指針が出されました。

指針ではまず、「労使当事者の責務」として、次のように指摘しています。

「労働時間の延長及び休日の労働は必要最小限にとどめられるべきであり、また、労働時間の延長は原則として同条第三項の限度時間を超えないものとされていることから、労使当事者は、これらに十分留意した上で時間外・休日労働協定をするように努めなければならない。」

限度時間を超えないことを改めて謳っています。これは当然のことですね。

この指針、協定を結ぶ際に注意すべき事項が詳細に書かれています。
次回も続けます。

 

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2018年12月25日

就業規則の実際(7)~採用(4)~労働条件明示

労働契約締結時に主要な労働条件を明示しなければならない

労働基準法では①労働契約の締結時に労働条件を明示すること、②賃金など一定の事項については書面により明示することを義務づけています。

具体的には次の通り。

<労働条件明示義務>

「法的義務」を超えて

労働条件の明示は労基法上の義務ですが、「言った、言わない」というトラブルを避けるという意味もあります。
トラブルのない、適切な労務管理という点でも、書面できちんと示すことが重要です。

 

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2018年12月25日

就業規則の実際(6)~採用(3)~身元保証人

身元保証とは

採用内定者や入社者に、身元保証書の提出を求める会社は多いと思います。

身元保証契約とは、従業員が会社に損害を与えた場合に、身元保証人が会社にその損害を賠償することを約するものです。つまり、身元保証人と会社との契約です。

◆身元保証人の責任

身元保証契約を結んだからといって、身元保証人に損害のすべてを賠償させることはできません。
使用者の過失の有無、身元保証を引き受けるに至った経緯等諸般の事情を考慮して裁判所が決定することとされており、通常は全額の賠償が命ぜられることはありません。

 

身元保証の期間

また、身元保証契約の有効期間を定める場合は5年を超えることはできません。また、期間を定めなかったときは、契約のときから3年とされます。

 

身元保証書の提出を拒否されたら

採用時の必要書類を、正当な理由無く提出しない場合、懲戒処分の対象となります。
これは問題ありません。

では、「採用取り消し」、つまり解雇処分まで可能でしょうか?

これは、①提出書類が入社後の業務遂行や諸手続きを行うに当たって必要性の高いものであるか、②書類の不提出によって雇用関係に重大な支障が生じるか、③当該書類の提出が採用の条件とされているか、などによって、有効性が判断されます。

身元保証書については、従業員の故意または過失によって会社に生じ得る損害がどの程度の大きさであるか等が考慮されます。

 

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2018年12月25日

就業規則の実際(5)~採用(2)~提出書類(2)

個人情報の取得には配慮が必要

個人情報の取得は、業務の目的の範囲内で収集、保管、使用しなければなりません。

また、厚生労働省は以下のような項目について、面接時に質問したり、情報を収集したりしないよう十分配慮するようにという行政指導をしています。

<本人に責任のない事項>

本籍・出生地に関すること
家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)
住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
生活環境に関すること(生い立ちなど)
<本来自由であるべき事項>

宗教に関すること
支持政党に関すること
人生観、生活信条に関すること
尊敬する人物に関すること
思想に関すること
労働組合・学生運動など社会運動に関すること
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<その他>

身元調査などの実施
合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

 

その他のポイントは?

(1)学歴チェック
新卒の採用選考の際に、学校の「卒業見込証明書」を提出させる会社は少なくありません。 ところが、入社の段階で「卒業証明書」を出させない会社が意外とあります。

その場合、その人の最終学歴は、何をもって確かめるのでしょうか? 「当社は学歴不問採用だから」ということであれば、それでもいいのですが。
(であれば、「卒業見込証明書」も不要ですね)。

また、卒業できなかった学生の内定をどうするかは、会社の人事政策次第です。

・そのまま入社させる
・単位取得に差し支えのない範囲で会社に来てもらう。(学校は卒業させる)
・採用取り消しにする …

いろいろな方法があります。

最悪なのは、「そんなはずではなかった」というケース。
つまり、卒業したと思っていたら、実はそうではなかったという場合です。

そんなトラブルを避けるためにも、入社時に卒業証明書を提出させるのがいいですね。

(2)住民票記載事項証明書
今どき住民票を提出させている会社はないと思いますが…

現住所の把握は必要です。
そのため、この書類を出してもらいます。

 

必要書類の提出がなかったら

期限までに書類等の提出がなかったら、会社としてはどう対処すべきでしょうか?
これは実務上も困ることが多いですし、何より、入社の時点から会社の指示に従わないの ですから、厳正に対処すべきです。

必要書類を提出しないのは、労働者の義務違反として、適格性が疑われます。
就業規則にもその点を明示しておくのが望ましいですね。

 

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2018年12月23日

就業規則の実際(4)~採用(1)~提出書類(1)

入社する社員には何を出してもらう?

就業規則には採用・入社時の手続や提出書類のことを記載します。
こういうことは、たとえ就業規則に記載していなくても、実務上必要になります。

たとえば採用選考の段階では、履歴書等の書類を出してもらいます。
また、入社が決まった人からは、年金手帳や現住所、扶養家族に関する書類を出してもらいます。

会社が提出を求めるものが常識的な範囲のものであれば、定められた期限までにこうしたものを揃え、提出するのが、「常識」です。

しかし、世の中いろいろな人がいます。

たとえば…

・ずぼらで期限までに提出しない人
・特別な信条をもっていて、提出に応じない人

こういう場合、会社は提出を「命令」しなければなりません。
また、最悪の場合、採用取り消しということもあります。

こうした人事措置の根拠になるのが、就業規則になるのです。

また、さきほど「常識的な範囲のもの」と書きましたが、これはどのようなものでしょうか?
この点も、きちんと考えなくてはなりません。

 

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2018年12月23日

働き方改革への取組(8)~労働時間短縮への取組⑦

36協定の内容は

これまでお話ししてきた通り、時間外労働をさせるためには「36協定」という労使協定を結ばなくてはなりません。
36協定で何を決めておかなくてはならないかは、これまでも決まっていました。
「働き方改革への取組(3)~労働時間短縮への取組②」をご覧ください)

 

法改正で36協定の内容はどうなるか

今回の法改正で、36協定に記載しなくてはならない事項が法36条第2項に定められました。
これまでは「施行規則」だったので、格上げされたかたちになっています。

内容は次の通り。

①労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
②対象期間(1年間に限る)
③労働時間を延長し、又は休日に労働させることができるのはどんな場合か
④対象期間における1日、1ヶ月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
⑤労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項

①~③についてはこれまでとほぼ同じです。
変わったのは④の期間。
1日、1年は同じですが、「1ヶ月」というのがこれまでは「1日超3カ月以内の期間」でした。
私の知る範囲では、この部分は1ヶ月としている会社が多いので、実務的にはそれほど影響はないと思われますが、もし1週間とか、4週間、3ヶ月などという具合に、1ヶ月以外の期間で協定をしている会社は、法改正後はここを1ヶ月に変更する必要があります。

⑤は次の通りです。
1)協定の有効期間
2)1ヶ月、1年の起算日
3)特別条項について
・限度時間を超えて労働させる事由
・限度時間を超えて労働させたときの割増賃金率
・特別条項発動の手続
・健康・福祉確保措置

1)、2)は現在と同じです。
変わったのは特別条項に関する部分ですね。

次回は特別条項がどう変わったかを見ていきます。

 

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2018年12月23日

就業規則の実際(3)~総則規定(3)~従業員の定義

「正社員」って誰のこと?

会社には、いろいろな雇用形態・勤務形態の人たちが働いています。
こういう人たちを「正社員」、「パートタイマー」、「契約社員」などといった呼称をつけて、会社は人事管理をしています。

呼称をどうするかは、会社の自由です。
しかし、定義は明確にしておかなくてはなりません。

 

明確にしていなかった場合のリスク

会社によっては、特に深く考えずに、パート、バイト、嘱託といった呼称をつけていることがあります。

結構リスキーです。

「アルバイト」と称しているものの、勤務時間も仕事の内容も、雇用期間も正社員と全く変わらなかったとします。
違いは、賃金が時給制であることだけ。
会社も、「アルバイトだからアルバイトなんだ」としか説明できない…

こういう状況で、当のアルバイトが社員並み待遇を求めてきたらどうなるでしょうか?
紛争になった場合は、諸般の状況を総合的に勘案して判断されることになるのですが、会社は有利な状態にあるとは言えません。

まずは就業規則で、会社で働く人の定義を明確にしておきましょう。

 

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2018年12月21日

就業規則の実際(2)~総則規定(2)~適用範囲

適用範囲は明確に

就業規則が適用されるのは、誰になるのか?
何も決められていなければ、その会社が雇用している労働者全員になります。

こう書いて、「そうだね」と思っている方に、ひとつ質問です。

御社には、正社員の他に、パートタイマーや契約社員、臨時社員といった、「非正社員」はいませんか?

もしいる場合、たとえばパートタイマーの待遇は、正社員と同じですか?

「そんなことはない」
…こういうお答えは99%になるでしょう。

正社員とは異なる形態の従業員を活用するのは、それなりの理由があるからです。
ということは、正社員と異なる部分がどこかにあるはずです。


・賃金
・労働時間
・雇用期間
…その他

たとえば…
・単純定型業務を担当してもらい、時間あたり賃金を低くする。
・社員と仕事のレベルは同じ(したがって時間あたり賃金は同じ)だが、労働時間は短い。
・新製品開発のために1年契約でプロフェッショナルを雇う
…など、さまざまなケースがあります。

こういう人たちに正社員の就業規則は適用しません。

しかし、もし就業規則に、「規則の適用範囲」が定められていなければ、こういう人たちにも正社員の就業規則が適用されることになります。

 

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2018年12月21日

就業規則の実際(1)~総則規定(1)~目的

ここは、意外とおざなりにされがちです。

【よくあるパターン】
「この規則は、株式会社○○の社員の労働条件、服務規律などを定めたものである。」

まぁ、「全然ダメ」とまでは言いませんが…

ただ、この条文が、就業規則のどこにあるかを考えてみてください。
「第1条」にくるのが一般的ですよね?
つまり、就業規則を手にした人の目に真っ先に飛び込むのが、この一文なのです。
いわば、就業規則の、「リード文」。
そこが、このような無味乾燥な文章だけにしてしまっては、もったいない。

では、何を書けばいい?

ここに、会社の経営理念や、会社のミッションを入れるのです。

会社が競争を勝ち抜いていくためには、人材の活性化、戦力化が必須です。
そのためには働く人と組織との一体感、方向性やゴールイメージの共有がなくてはなりません。
これがあって、従業員のモチベーションが上がり、活力ある組織が出来上がるのです。

それを実現するためには、会社の理念がどこにあるか、どこを目指しているのかを明確にし、それを会社と従業員が共有している必要があります。

どうやって?
方法はいろいろありますが、もっとも有効なツールのひとつが、就業規則です。
ぜひ、そのような活用をしましょう。

 

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2018年12月21日

ここがポイント!就業規則作成・変更

あるべき姿から現状診断

就業規則の作成・見直しにおいて最初にやるべきことが「現状診断」です。

◆作成時の現状診断

新たに就業規則を作成する際に行う診断は、会社の人事・労務の現状診断です。
会社の労働時間管理、賃金決定基準や支払方法といった、現実に会社で行われている人事・労務管理施策を、就業規則の記載項目に沿った形で洗い出していきます。 

◆見直し時の現状診断

就業規則見直しの際、目の前にある就業規則を眺め、「ここはまずいな」とか「この項目が抜けている」とチェックを入れていくというのが、割とよく見られるやり方です。

いま存在する就業規則をじっくり読み込み、そこから問題点を探していくということも、必要なことです。
しかし、これだけで十分な見直しはできません。漏れ・抜けが生じます。
見直し対象の就業規則現物に、引きずられてしまうのです。

したがって、就業規則見直しにあたっては、「本来こうあるべき」「こうあってほしい」という、「目指す姿」からのチェックが必要なのです。

そのために「就業規則チェックリスト」を用意し、リストを元に就業規則をチェックしていきます。
こうすることにより、抜けている項目は見直すべき項目が明らかになるとともに、内容を漏れなくチェックできます。

 

不利益変更への対応

◆就業規則は「生き物」である

就業規則はいったん定めたあとも常に見直し・変更が繰り返されます。
法改正への対応もありますし、そもそも、会社の人事制度を具体的な文書としたものが就業規則ですから、こうしたものが変われば、当然就業規則も変更されます。

さらに、企業業績の悪化に伴う変更もあります。

就業規則の変更が問題になるのは、労働者にとって不利な変更の場合です。

◆就業規則の不利益変更と労働契約

労働契約法第9条には、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない」と、労働条件の不利益変更は合意が原則であることをまず述べています。

そのうえで、次の第10条の場合は、「その限りではない」としています。

「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。(以下、略)」

つまり、次の2つの要件を満たしている場合は、たとえ個々の労働者が同意をしていなくても、就業規則の不利益変更が可能だということです。

(1)就業規則変更の内容が合理的である
(2)変更後の就業規則を周知している

この「合理的」の判断基準は以下の通りとなります。

①労働者の受ける不利益の程度
②労働条件の変更の必要性
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他の就業規則の変更に係る事情

◆労働者の受ける不利益の程度と労働条件の変更の必要性

これは、変更をしないままでいた場合に経営に与える悪影響の度合いと、変更により労働者が被る不利益の度合いとのバランスということです。

両者のバランスを考えて、労働者に過剰に不利益とならないようにしなければ、その不利益変更は認められません。
特に、賃金や退職金などの重要な労働条件の不利益変更については、変更しなければ会社の存続にかかわるなど、「差し迫った経営の危機」に基づいたものであることが求められます。

◆変更後の就業規則の内容の相当性

就業規則の変更内容が、その時点の日本社会の一般的な通念・常識から見て妥当かどうか、ということです。
変更の代償として行われる措置や、関連する労働条件の改善状況なども判断材料に含まれます。

◆労働組合等との交渉の状況

「労働組合等」には、労働者の過半数が所属する労働組合から、少数労働組合、労働者の過半数代表者、労働者で構成される親睦団体まで、労働者の意思を代表するものが幅広く含まれます。(「労働契約法の施行について」(平成20年1月23日基発第0123004号)。

就業規則の不利益変更を実施するに当たって、労働者側と誠意をもって話し合ったかどうかが問われるということです。

 

戦略的な人事制度変更と就業規則

就業規則は、人事制度改定に合わせて変更することもあります。
この場合、業績悪化などの差し迫った経営危機があるために変更するとは限りません。
将来の成長戦略のために、人事制度を改革することもあるからです。

このような戦略的な就業規則変更の場合、結果として労働条件が上がる従業員もいれば、労働条件が下がる従業員もいます。
典型例が、賃金体系を年功序列型から成果・貢献度重視型へ変更する場合でしょう。

このような場合、現実の不利益があるとは限りませんし、人事評価などによって労働条件が上がる人もいれば下がる人もいます。
しかし、一部の社員でも労働条件が不利益になる可能性がある場合は、不利益変更にあたるとされています。
そのため、人事制度改革などに合わせた就業規則の変更の際にも、前述の就業規則の不利益変更の法理が適用されます。 し

かしながら、このような戦略的な就業規則の変更を、経営危機等による就業規則の不利益変更の場合と全く同じ基準で判断するのは、適切ではありません。


人事制度改革に合わせた就業規則変更の場合は、次の5点で合理性を判断するのが適切と思われます。

①制度内容、評価基準が公正・透明であること
②賃金総原資は同じであること
③一定の経過措置が設けられていること
④特定の層に不当な不利益を課すものでないこと
⑤労働組合等と十分な協議を尽くしていること

◆制度内容、評価基準が公正・透明であること

制度が一定のポリシーのもとに設計されており、内容が公開されている必要があります。
特に成果・貢献度重視型の人事制度に変更する場合、ここをしっかり押さえなければなりません。
なかでも、人事評価制度の内容や評価基準を公正・透明なものにすることは、賃金や格付といった重要な労働条件に直結するため、最重要ポイントといえます。

◆賃金総原資は同じであること

人事制度の改革を伴う戦略的な就業規則変更では、「原資イコール」が原則です。
つまり、社員によって賃金が上がったり下がったりしても、社員全体で見れば、変更前と同じ金額を会社が支払っているということです。
もし、新制度移行によって社員に支払う賃金総額が減るようであれば、差し迫った経営の危機が要件とされる可能性が高くなります。

◆一定の経過措置が設けられていること

新人事制度導入によって労働条件が下がる社員に対し、激変緩和措置など一定の経過措置を設けているか否かも、重要な判断基準となります。

◆特定の層に不当な不利益を課すものでないこと

中高年など特定の層を狙い打ちにしたような制度変更は、無効とされる可能性が高くなります。

◆労働組合等と十分な協議を尽くしていること

労働組合や労働者代表などと誠意をもって協議することは、ここでも重要な要件となります。

 

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2018年12月21日

就業規則の機能

就業規則には次の3つの機能があります

 

  • 法を守る~労務コンプライアンスの確立
  • 会社を守る~労務リスク管理
  • 社員を活性化する~人事のアカウンタビリティ

 

法を守る

労使トラブルの増加、雇用問題への関心の高まりを受け、法令遵守の重要性が増しています。

労働基準法をはじめとして、会社が守るべき労働法令は多岐に渡ります。
そして、この分野は改正、新法制定の動きがさかんです。
また、人事労務に関連する法律は、労働法に限りません。
民法、個人情報保護法、公益通報者保護法など、働く人に関連する法律はいろいろあるのです。
会社は、これらをしっかり押さえ、法違反を犯さないようにしなければなりません。

「法を守る」基本となるのが、就業規則です。
就業規則の内容を法令に則ったものにし、内容を周知することが、その第一歩となります。

また、就業規則そのものにも法的規制があります。記載事項、作成手続、周知義務などです。
したがって、就業規則を法に則って作成することも必須です。
法に則った就業規則を作成し、労使ともに就業規則を遵守することが、コンプライアンス経営の基本なのです。

 

会社を守る

会社は訴訟も含め、人を雇うことに伴う様々なリスクに晒されています。

これを「労務リスク」といいます。

この労務リスクは次の3つに分類できます。

コンプライアンスリスク:法令違反が引き起こす、訴訟などのリスク
人的リスク:従業員が直接引き起こすリスク
健康・メンタルヘルスリスク

就業規則は、このような労務リスクを防ぐという機能をも担います。
就業規則の中で服務などに関する事項を明確に定め、周知することによって、従業員の不祥事を防止することが可能になります。

一方、就業規則は、会社も守らなくてはならないルールです。
就業規則により、会社の遵法行動が確立されます。
たとえば、管理職が不法な残業を部下に強いたり、セクハラ行為をすることを、就業規則の整備と周知徹底によって防止することができます。

また、従業員の健康管理やケア体制も、就業規則の整備を通じて行うことができます。
従業員にとって、自社の労働条件や健康管理体制がどうなっているかよく分からない状態は、不安なものです。場合によっては不信感にもつながります。

このようなことを就業規則に明記することにより、従業員は安心して働くことができます。
就業規則整備は、人材の流出阻止にもつながるのです。

このように就業規則は、会社が晒される様々な労務リスクに対し、防波堤の機能を果たします。
そのためには、会社の事業内容、内外の環境などを十分考え、就業規則の役割と機能を理解した上で就業規則を作成する必要があるのです。

 

社員を活性化する

就業規則のバックには、会社の人事制度、さらにいえば会社の人事ポリシーがあります。
就業規則は、会社の、従業員に対する説明責任を果たすツールでもあるのです。
この機能が果たされているかどうかで、従業員のモラール、モチベーションは異なってきます。
たとえば、会社がどのような人材を、どのように処遇するかが、賃金の項目に現れます。 ま
た、会社が従業員を大事にしているかどうかは、安全衛生や福利厚生の項目を見れば分かります。

 

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2018年12月21日

就業規則の内容は?

就業規則に記載すべき事項は労働基準法で定められています。

 

1)から3)までと、3の2)以降では表現が若干異なっていることにお気づきでしょうか。

後者には「定めをする場合には」という言葉があるのに対して、前者にはそれがありません。
つまり1)から3)は、就業規則に必ず定めなくてはいけない「絶対的必要記載事項」であり、3の2)以降は、定めがあれば記載しなくてはならない「相対的必要記載事項」になります。

たとえば、退職金制度は法的義務ではありませんが、もし制度を作ったのなら、就業規則にも入れなくてはならないということです。

就業規則には、入れる・入れない含めて自由に決めていい「任意的記載事項」もあります。
社是社訓、経営理念、人事方針などが該当します。(ここを定めていない就業規則が少なくありませんが、結構重要です)

 

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2018年12月21日

就業規則はこうつくる

就業規則作成の流れ

 

労働者代表からの意見聴取

就業規則の作成・変更を行ったときは労働者の過半数代表者(過半数を代表する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は過半数代表者)の意見を聞かなくてはなりません。

過半数代表者に管理職がなることはできません。
選出にあたっては、何のために選ぶのかを明示した上で、投票、挙手などの方法によらなくてはなりません。会社が指名してはいけません。

また、労働組合はあるけど、組合員が過半数に満たない場合は、別途過半数代表者を選ばなくてはなりません。逆に、労働組合は複数あるが、そのひとつの組合だけで過半数を網羅している場合は、その意見だけを聞けばOKです。

現実には、全く無視することは望ましくありません。

就業規則に限ればそれでも問題ありませんが、少数組合にも団体交渉権はありますから、もし団交の申し入れがあったら応じなくてはいけません。
対応を誤ると、労使紛争につながりかねないので、注意が必要です。

 

労働基準監督署への届出

その上で、所轄労働基準監督署に、労働者代表の意見書を添付して届け出ます。


労働者代表が反対意見を述べても、反対意見を記した意見書を添付すればOKです。
同意は要件になっていません。

とは言え、労働者の過半数代表が反対している就業規則を強行することは、労務管理上も労使関係上も望ましくありません。
協議を尽くして、理解を得ることが大切です。

もし過半数代表が、意見を述べること自体にも反対したらどうなるのでしょうか。
その場合、意見を求めたことが客観的に明らかになる書面を添付します。

 

作成・届出の「単位」

就業規則の作成・届出は、「事業場」単位です。会社全体ではなく、場所を単位とします。
従って、支店などの事業場に常時10人以上の労働者がいる場合は、事業場ごとに作成・届出をしなくてはなりません。
ただし、届出に関しては、各事業場の就業規則の内容が同じなら本社で一括して行うことができます。

社内への周知

作成・変更した就業規則は、社内に周知させなくてはなりません。

周知の方法は、常時見やすい場所に掲示する、印刷物を配布する、イントラネットなどで閲覧できるようにするなどの方法が考えられます。

既にインフラがあるのなら、ネット経由で閲覧できるようにするのが、一番安価ですし、アップデートもすばやくできます。
ただ、セキュリティの問題には注意が必要です。
また、いわゆる「デジタル・デバイド」にも配慮が必要でしょう。

 

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2018年12月21日

就業規則はなぜ必要?

就業規則は、なぜ作成するのでしょうか?

「労働基準法に定められているから」。

確かにその通りです。
常時10名以上の労働者を使用する使用者は、労働基準法により就業規則の作成が義務づけられています。

つまり、就業規則作成は、人を使って事業を営むうえでの責務となっているのです。

では、就業規則を法的義務という位置づけだけで捉えていいものでしょうか?

もしそうだとすると、就業規則は、強制されて仕方なく作成するものということになります。

しかし、就業規則の位置づけは、それだけにとどまるものではありません。
実は、この就業規則の位置づけをどう考えるかによって、人材活用や処遇のあり方が大きく異なってくるのです。
法的義務ということを超えて、就業規則のあり方をしっかり考え、 作成する必要があるのです。

 

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2018年12月21日

働き方改革への取組(7)~労働時間短縮⑥

働き方改革関連法制を読み解きながらこれからの人事制度のあり方を考えるシリーズ企画、いまは労働時間・残業時間に関するお話を続けています。

今回も時間外の上限規制についてみていきます。

法改正で、従業員を働かせることのできる時間がこれまで以上に厳しく制限されることになりました。

ここで注意しなくてはならないのが、「80時間」とか「100時間」というのは、どういう時間を指しているのかという点です。

◆労働基準法が定める労働時間、休日とは?

まず基本的なことをおさらいします。

労働基準法では、労働時間を1日8時間以内、1週40時間以内と定めています。
これを「法定労働時間」といい、この時間を超えた分が時間外労働となります。

もし会社の所定労働時間が7時間となっているなど8時間未満の場合、7時間腸時間以内の分は法律上は時間外になりません。

したがって、時間外の上限規制の対象になるのはあくまでも法定労働時間を超えた分です。

次は休日です。
労働基準法では、休日は週1日以上となっています。(4週4日というパターンもありますが)。
これを「法定休日」といい、この日に仕事をさせたら休日労働ということになります。

週休2日制で、土日が休日、法定休日が日曜日の場合(ちなみに法定休日をいつにするかは会社で決められます)、土曜日に仕事をしても、労働基準法上は休日労働とはなりません。
ただしその結果、週の労働時間が40時間を超えた場合、その分は時間外労働となります。

◆時間外の上限規制の「時間」とは?休日労働は入る、入らない?

では本題に戻りましょう。

改正法ではいくつかの角度から労働時間の上限を定めていますが、この「時間」のとり方には次の2つのパターンがあるのです。

パターン①:時間外労働だけ
パターン②:時間外労働+休日労働

ここは要注意です。
時間外労働だけ見ていて限度時間に収まっていると安心していても、休日労働を加えたら超えてしまっていたということがおこってしまうかもしれませんので。

◆パターン別上限規制

このようになっています。

パターン①(時間外労働だけ)
・時間外労働の1ヶ月限度時間(45時間以内)
・時間外労働の1年限度時間(360時間以内)
・特別条項の1年上限時間(720時間以内)

パターン②(時間外労働+休日労働)
・特別条項の1ヶ月上限時間(100時間未満)
・特別条項の2ヶ月ないし6ヶ月平均上限時間(80時間以内)

特別条項の1ヶ月上限時間だけ「未満」となっている点にも要注意ですね。

◆パターン②は特別条項だけの話ではない

これまで述べてきたように、パターン①の上限時間はあくまでも時間外労働だけが対象で法定休日労働は含まれません。
これだけだと、時間外労働は限度時間の範囲におさめて、法定休日労働増やしても問題ないということになり、上限規制が尻抜けになるおそれがあります。
パターン②には、それを防ぐという意味があります。
この点も要注意ですね。

 

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2018年12月21日

働き方改革への取組(6)~労働時間短縮⑤

今回も改正法による時間外の上限規制についてみていきましょう。

◆時間外の「絶対的な上限」

36協定には「特別条項」というのを設けることができるというお話を少し前にしました。

限度時間を超えることがあり得る場合は、36協定に特別条項を設けることにより、限度時間を超える時間外を命じることができるというものです。
年6回(≒6ヶ月)以内という制限はあるものの、時間数そのものに上限はなく、「事実上の青天井ではないか」という批判もされていました。

これが法改正により、一部の例外を除いて、上限が設けられました。
これまでと違い、労使合意があってもこの上限を超えることは絶対にできません。

内容は次の通りです。

上限①
・期間:1ヶ月
・限度時間:時間外、休日労働の合計で100時間未満

上限②
・期間:1年
・限度時間:時間外720時間以内

上限③
・期間:2ヶ月ないし6ヶ月
・限度時間:時間外、休日労働の合計で平均80時間以内

③が分かりずらいところですね。

これはたとえば9月を起点に考えると--
・8月~9月の2ヶ月
・7月~9月の3ヶ月
・6月~9月の4ヶ月
・5月~9月の5ヶ月
--このいずれの期間をとっても平均80時間以内におさまらなくてはならないということです。

 

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2018年12月20日

無期転換に対応した人事制度の作り方(5)

前回に引き続き、無期転換に対応した人事制度設計のポイントをお話します。

B.「限定要因」と仕事の価値、成果の関係を明確に

限定型正社員は当然働き方が限定されます。それゆえに、無限定正社員と賃金に差をつけるという考え方も当然ありますし、不当ではありません。
ただし、その「差」を合理的に説明できるものにしなくてはなりません。
そうなると、賃金や賞与の構成要素をきちんと分類して考える必要がでてきます。
たとえば、次のような場合を想定してみます。
・会社に正社員と勤務地限定型正社員がいる
・賃金は役割を中心に他の要素も勘案して決める
・賞与は成果を基準に決める
この場合、正社員、勤務地限定型正社員の両者の役割の価値が同じなら、賃金のうち、役割対応部分は同じになります。一方、会社に人事異動のフリーハンドがある方が事業運営上の価値があるということであれば、この「価値」を数値化し、賃金に反映させます。また、賞与は上げた成果の大きさだけを基準に決めるようにします。

C.コース転換を認めるか

正社員と限定型正社員の転換制度を設けるかどうかを、会社の人材状況、事業の必要性、社員のニーズの3点から検討します。
また、転換制度を設ける場合、それが双方向なのか片方向なのか、転換は何回まで、どの程度の頻度で認めるのかといったこともつめます。

D.類型別検討事項

(1)勤務地限定型

1.限定範囲
限定範囲、すなわち、部署限定、事業所内限定、通勤可能圏内限定、一定エリア(関東圏内など)限定といったことを決めます。

2.期待役割
勤務地限定型正社員制度は社員のライフ重視型施策といえます。
とはいえ、ただそれだけでは社員のモチベーションという点で不十分です。会社としても、人材引きとめにとどまらない効果を期待したいところです。
勤務地限定型正社員ならではの価値として、地域の特性を熟知していることがあげられます。それを活かした営業活動、製品開発などに積極的に関わってもらうような人事を検討するのがいいのではないでしょうか。

(2)時間限定型

1.限定範囲
時間限定型の場合、勤務日数を限定するパターンと勤務時間を限定するパターン、両者の組み合わせパターンがあります。
本人のニーズと事業上の必要性の両者を勘案して設定します。

(3)職務限定型

1.限定範囲
職務とは、1人が担当する一連の業務の集まりと定義できます。
たとえば、営業職、人事採用職などです。
現実には、1人の社員が担当している業務には様々なものが混じりこんでいることが普通です。したがって、この職務というのは論理的な業務の集まりということになります。

 

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2018年12月20日

無期転換に対応した人事制度の作り方(4)

限定型正社員の人事・賃金制度設計フロー

人事・賃金制度設計の手順は、限定型正社員であっても同じです。図に典型的なフローをお示しします。

 

 

限定正社員人事制度の検討のポイント

A.人事等級制度が最大のポイント
人事・賃金制度は、人事等級制度、人事評価制度、賃金制度の3つが基本的な枠組みになります。
この中で中心にくるのが人事等級制度で、これは社員を何らかの基準でランク付けするものです。人事等級制度を軸に人事評価基準や賃金決定基準が設定されます。
人事等級の基準には、職務遂行能力、職務レベル、役割レベルの3つがあります。

 

限定型正社員の人事・賃金制度においては、職務や役割を機軸に考えていくのが親和性が高いように思われます。特に職務限定型正社員についてはそうです。
ただし、職能等級であっても、職務分析によって職務と能力の紐付けができていて、かつ、能力評価が合理的に行われていれば十分に対応可能です。
いずれにしても、「同一(価値)労働・同一賃金」の流れの中で、人事・賃金の決定基準はより重要なものになっていきます。

 

B.「限定要因」と仕事の価値、成果の関係を明確に

限定型正社員は当然働き方が限定されます。それゆえに、無限定正社員と賃金に差をつけるという考え方も当然ありますし、不当ではありません。
ただし、その「差」を合理的に説明できるものにしなくてはなりません。
そうなると、賃金や賞与の構成要素をきちんと分類して考える必要がでてきます。
たとえば、次のような場合を想定してみます。
・会社に正社員と勤務地限定型正社員がいる
・賃金は役割を中心に他の要素も勘案して決める
・賞与は成果を基準に決める
この場合、正社員、勤務地限定型正社員の両者の役割の価値が同じなら、賃金のうち、役割対応部分は同じになります。一方、会社に人事異動のフリーハンドがある方が事業運営上の価値があるということであれば、この「価値」を数値化し、賃金に反映させます。また、賞与は上げた成果の大きさだけを基準に決めるようにします。

 

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2018年12月10日

働き方改革への取組(5)~労働時間短縮④

ここまで、現在の時間外規制がどうなっているかをみてきました。
では、これが改正法ではどうなるのでしょうか?

◆時間外の上限規制

これまでお話ししてきた通り、いまでも時間外の限度に関する規制はあります。
ただ、具体的な限度時間は「告示」というかたちでしたが、今回の法改正で、法律の条文に「格上げ」されました。

またこれまでは、規制の内容が「当該協定(36協定)の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない」というものでした。
「なるようにしなければならない」…
要するに、絶対に守らなればならない義務とまではなっていない状態なのですね。

実務的には大半の会社がこの限度基準の範囲におさまるようにしていましたが、法律の条文になったという意味は小さくありません。
限度時間を超えたらただちに法違反となるわけですから。

また、これまでの限度時間は1日超3カ月以内と1年で定めることになっていましたが、改正法では1カ月、1年となりました。
これまでも1カ月、1年という単位で協定を結んでいる会社が多かったと思いますので、実務的にはそれほど影響はありません。
時間数は1カ月45時間以内、1年360時間以内で、現在の限度基準と同じです。

 

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2018年12月10日

無期転換に対応した人事制度の作り方(3)

限定型正社員の人事制度を設計するには

以下、限定型正社員の人事・賃金制度設計のポイントを述べていきます。ただし、単純無期契約社員についてもあてはまる部分が多々あります。単純無期型で対応する場合も、適宜応用していただければと思います。


1.会社の状況を把握する

人事・賃金制度を設計する際にまず最初にやるべきことは現状分析です。ここでは、限定型正社員制度を設計する上で特に押さえておくべき事項を述べます。

A.業務
人事制度設計で必要になるのが会社の業務の把握です。このために行う作業を職務分析といいます。
職務分析を通じて、会社にどのような職務をあるのか、それを遂行するためにはどのような要件が求められるのかを洗い出します。
職務分析を通じて洗い出された職務をランク付けします。このランク付け作業を、職務評価といいます。
職務分析・職務評価によって、会社全体の仕事と遂行要件を一覧にした職務基準書ができあがります。これが人事制度設計の基本ツールになります。

B.人事ポリシー
会社の人材活用の基本方針です。限定型正社員制度との関係では、求める専門性、人材調達・育成の2点が重要です。

(1)求める専門性
社員に求める専門性の内容とレベルです。
職務内容と結びついた具体性が必要です。たとえば「マーケティング」という場合、対象とするマーケット、製品・サービス、マーケティング手法などをできるだけ明確にします。
また、ゼネラリスト中心なのかスペシャリスト中心なのか、両者のおおまかな比率はどうするかといった、人材タイプの組み合わせも検討する必要があります。

(2)人材調達・育成
長期育成型中心か市場調達型中心かということです。
長期育成型の場合、新卒・若手が採用の中心になります。定年までの雇用を前提に、長期間にわたってじっくり育成・活用していきます。
市場調達型の場合は、即戦力の中途採用が中心になります。
両者をどのように組み合わせていくかがこれからの人材活用のポイントになります。また、市場調達型は職務限定型正社員との親和性が高いといえます。

C.組織風土の現状と今後
組織には、これまでの歴史や経営者の個性・考え方などを通じて醸成され、組織成員の行動特性に現出される空気のようなものがあります。これを組織風土といいます。
いかなる制度を入れるにしても、組織風土を無視することはできません。
それは現在の組織風土をそのまま維持するということでは必ずしもありません。いまの風土を変革しようという場合も含みます。

(1)多様性への耐性
限定型正社員は「多様な正社員」とも称されます。このことからもわかるように、この制度は多様性を受け入れ、積極的に推進しようという方向に会社をもっていきます。
したがって会社は多様性を受け入れる土壌にあるのかどうかということと、その現状を将来にわたってどうしていきたいのかを把握しなくてはなりません。

(2)求める忠誠心
組織は組織成員に何かしらの忠誠心を求めます。組織を維持発展させるうえで必須のことです。
忠誠心にも次のようにいろいろな態様があります。

①職務に対する忠誠心
これが強い人は仕事そのものや仕事を通じたキャリアアップに価値を見出す傾向にあります。

②ポストに対する忠誠心
いわゆる出世志向です。組織を通じてやりたいことを実現したい人、あるいはステータスを求める人はこれが強くなります。

③上司に対する忠誠心
いわゆる滅私奉公的な人はこれが強いです。

④ライフに対する忠誠心
これが強い人は、仕事よりプライベートを優先します。

会社に①が強い人が多い場合は職務限定型正社員制度が、④が強い人が多い場合は勤務地限定型正社員制度や時間限定型正社員制度がそれぞれうまくいくと思われます。

 

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2018年12月07日

働き方改革への取組(4)~労働時間短縮③

現行法制のもとでの時間外労働規制のお話、もう少し続けます。

前回、36協定には時間外の限度を定めなくてはならず、かつ、この限度時間にも基準があるというお話をしました。

この「基準」がどの程度の強制力があるのかということについては後日お話をしますが、原則的にはこの基準が法的に許される時間外労働の上限のようなかたちになっています。

しかし、現実には限度時間を超えてしまうこともあり得ます。それに対応する方法として、「36協定の特別条項」というものがあります。

これは、36協定に特別条項を設け、その中に、「特別の事情」、「限度時間を超える場合の手続き」、「特別延長時間」を定めておけば、その範囲で限度時間を超える時間外労働を命じることができるというものです。

◆特別の事情とは

まず、「特別の事情」に概括的・網羅的なものを定めることは許されていません。具体的に定める必要があります。

そして、
・特別の事情とは、臨時的なものに限る。臨時的とは、その業務で特別な時間外をさせるのは、1年の半分を超えないということ。
・協定では、「1日を超え3ヶ月以下の一定期間」について、特別な時間外をさせる回数を決める。
――という制限もあります。

36協定で時間外労働時間を、1日、1ヶ月、1年の単位で定めている場合(一番一般的なケースです)、特別条項を使えるのは6ヶ月以内かつ6回以内ということになります。

 

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2018年12月07日

働き方改革への取組(3)~労働時間短縮②

今回は、現行の時間外労働の規制がどうなっているかを概観しましょう。

◆36協定

会社は必要があれば社員に時間外労働を命じることがあります。
当たり前のように思っている方も少なくないと思いますが、法的にはそれなりの要件を満たしていないと時間外を命じることはできないことになっています。

時間外労働を命じるためには、次の2つの要件を満たしていなくてはなりません。
・労使協定を締結している
・就業規則に時間外労働を命じる旨の定めがある

この労使協定を「36協定」といいます。労働基準法36条に基づいているということですね。

具体的には、使用者が
1)事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があれば、その労働組合、そのような労働組合がない場合は、労働者の過半数代表者と
2)書面による協定を結び、
3)その協定を所轄労働基準監督署長に届け出れば
――協定の定めに基づいて、時間外労働、休日労働をさせることができるということです。

36協定で定めなくてはならないことは、次の通りです。
・時間外または休日に労働させる必要のある具体的事由
・業務の種類
・労働者の数
・延長すべき時間または労働させるべき休日
・有効期間

ここでいう「延長すべき時間」というのが、時間外労働をさせることのできる上限です。
これは1日、3か月以内の一定期間、1年の3つの単位で定めます。
「3か月以内の一定期間」とありますが、実務的には1カ月にしているところが多いです。

◆時間外限度基準

このように36協定では時間外労働の上限を定めなくてはなりません。
この時間を超えて時間外労働をさせてしまうと、違法となります。
「それなら、この時間をできるだけ多めにしておいた方がいい」と考えがちですが、そうもいきません。

協定の当事者は厚生労働大臣が定める基準(限度基準)に合致したものとなるようにしなければならないとされています。
限度基準は告示で次のように定められています。

・1ヶ月:45時間
・1年:360時間

(1ヶ月、1年以外の期間についても定めれられていますが省略します)

 

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2018年12月06日

無期転換に対応した人事制度の作り方(2)

有期労働契約を無期転換した場合、正社員に転換するやり方と、新たな形態を設ける方法の2つがあります。
この「新たな形態」として考えられるのが、単純無期契約社員と限定型正社員の2つです。

1.単純無期
その名の通り、契約期間を単純に無期にしただけで、それ以外の労働条件等は有期労働契約のときとほぼ同じという形態です。
一番簡便な方法といえますが、注意点も当然あります。

A.定年の定めの有無は要確認
有期労働契約の場合、定年を定めていないことが少なくありません。そのような状況で、単純無期契約社員には新たに定年の定めをおくということにするのであれば、予め就業規則等に明記し、周知する必要があります。

B.就業規則は必須
単純無期契約社員用の就業規則を、無期転換申込み権が行使される前に定めておく必要があります。放置しておくと就業規則の適用関係が曖昧になり、トラブルにつながります。
特に、前述の定年制を新たに定めた場合、労働条件の不利益変更になりますので要注意です。もちろん、定年制以外にも追加・変更したい事項があるのなら、就業規則に定めることが必須です。
また通達は、「無期労働契約への転換に当たり、職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後における労働条件を従前よりも低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましいものではないこと」(平成24年8月10日基発0 8 1 0 第2号)としていますので、この点も要注意です。

2.限定型正社員
近年注目を集めている人材活用形態です。
「限定」には様々な態様が考えられますが、代表的なのは「勤務地限定」、「時間限定」、「職務限定」の3つです。
有期労働契約は元々職務や労働時間が限定されていることが多いため、無期転換制度との親和性は高いといえます。
また、人材育成・活用・処遇の一連の施策との関係で限定型正社員制度導入の目的、期待効果をあげると、次のようになります。
・ワークライフバランス
・育児、介護
・キャリアパターンの多様化
・人材活用形態の多様化

制度導入の目的・効果と、制度類型との一般的な対応関係を表に示します。

 

 

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2018年12月06日

無期転換に対応した人事制度の作り方(1)

無期転換制度の概要

無期転換制度は労働契約法18条に基づいた措置で、次の要件を満たした場合は有期労働契約が無期労働契約に転換されるというものです。

①有期労働契約が1回以上更新されている。
②契約期間が通算して5年を超えている。
③労働者が無期労働契約への転換を申し込んでいる。

この「5年」は、改正労働契約法施行日、すなわち2013年4月1日以降に始まる契約の始期からカウントされます。
したがって、最短で2018年4月1日から無期転換が始まっていることになります。

出典:厚生労働省「労働契約法改正のポイント(リーフレット)」

無期転換の態様

無期転換制度は労働契約の期間のことだけを対象にしており、転換後の契約内容などのことは何も規定されていません。そのため、転換後の形態にはいくつかのバリエーションが考えられますが、整理すると次の2つに分類できます。
①正社員に転換する
②新たな形態を設ける
この「新たな形態」として考えられるのが、単純無期契約社員と限定型正社員の2つです
無期転換後の形態としてどのようなものを用意するかは会社の自由です。
特定の形態だけを用意するという方法や、複数の形態を用意し、本人の希望と適性に応じて適用を決めるという方法などが考えられます。

また、無期転換申し込み権を得た労働者が実際に無期転換を申し込んだ場合、会社は必ず転換をしなくてはなりません。
職務限定型正社員など、ある特定の形態だけしか無期転換後の受け皿がない場合、無期転換希望者を必ずその形態で登用しなくてはならないのです。
「この人は職務限定型正社員には馴染まない」と会社が判断しても、登用を拒否することは許されません。
無期転換制度を設計する際には、この点も考慮に入れる必要があります。

 

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2018年12月03日

働き方改革への取組(2)~労働時間短縮①

働き方改革を推進する原動力として大きかったのは、長時間労働問題です。

古くて新しい問題ですね。
「ウサギ小屋に住むワーカホリック」と揶揄されたのはもう30年以上も前です。
また、過労自殺やサービス残業が問題になる都度、長時間労働の解消が叫ばれてきました。

見かけ上の総労働時間は減っていますが、フルタイムの正社員がパートタイマーに置き換わったという要因が大きく、正社員の負荷はむしろ増えているという見解もあります。

これには、技術革新の結果、いつでもどこでも仕事ができるようになったことも影響しています。
IT技術・モバイル機器の進化は、プラスの方向にいけば、柔軟で自由な働き方につながりますが、一方で、切れ目なく仕事をしている状況に置かれてしまうということにもなりかねません。

これは大変なストレスです。

労働時間の問題というよりメンタルヘルスやハラスメントの問題という方が適当かもしれませんが、これらは密接に絡み合う問題です。

さて、労働時間・時間外労働委短縮や年次有給休暇取得促進に向けて、法制・行政もさまざまな対応をしてきました。
次回から、現在の時間外規制、年休取得促進制度がどうなっているか、そして改正法はどうなったかを見ていきます。

 

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2018年12月03日

働き方改革への取組(1)~はじめに

働き方改革法制が成立し、関連する政省令案や36協定届の新様式も公表されました。
改正法の施行日はその内容によって異なりますが、最短で2019年4月、すなわち、来年の4月です。
対応を進めていくべき時期に入ってきましたね。

働き方改革法制が作られたのは、当然理由があります。
一言でいってしまうと、これまでのやり方に限界がきていたから。

しかし、今回の法改正であらゆる問題が解決するというものでもありません。
積み残し案件も多々ありますし、そもそも今回の改正法が実効性あるものかもまだ分かりません。

そのように考えていくと、会社がこれから取り組むべき課題も見えてきます。

会社にも人材管理上の問題や課題が多々あります。
これまでうまくいっていたやり方が通用しなくなったということもしばしばです。

その原因は次の3つでしょう。

①外部環境の変化(高齢化、人手不足、ブラック企業批判、グローバル化など)
②事業内容、事業構造の変化
③働く人の意識の変化

これらは最近急におこったことではありません。世の中が動いている限り続くことです。
ですから、過去のどの時点でも、新聞や雑誌は「激動の時代に入った」と書いています。
マスコミ特有の煽りもありますが、「変化」が「常態」ということかなとも思いますね。

いずれにしろ、常に変化していく環境に適合させていく不断の営みが会社経営ということですし、人材管理もその点は同じです。

このブログでは、これからの人材管理のありかた、制度の構築と運用を、働き方改革法制への対応も含めてみていきたいと思います。

 

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2018年12月02日