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就業規則の実際(49)~懲戒(1)

懲戒規定はほとんどの会社が設けている

従業員が何か不始末をした場合、会社はそれに対して、譴責・出勤停止・減給・降格・諭旨解雇・懲戒解雇などの処罰をします。
このような会社の人事を「懲戒」といい、懲戒をする権限を「懲戒権」といいます。


会社が組織としての秩序を保ち、働く人が自分の就業環境を妨げられないようにするためには、それを乱す従業員にはしかるべき罰を与えなくてはなりません。
そのため、懲戒謙は会社が当然に有する権限です。
判例も「労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守する義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その運用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種の制裁別である懲戒を課することができる」として、会社の懲戒権を認めています。

 

何でもありではない

だからと言って、会社は従業員に、自由自在に懲戒処分をすることができるわけではありません。

労働契約法は、第15条で、 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定めています。

 

懲戒処分の要件は

では、どのようにすれば、会社の懲戒処分は有効となるのでしょうか。
ポイントは次の3点です。

1)就業規則などに定めがあること
労働基準法はその第89条で、「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を就業規則に定めなければならないと定めています。
つまり、次の事項を定めておかなければ、会社は懲戒処分をすることはできないのです。

・懲戒処分の対象となる行為
就業規則に「何をしたら懲戒処分の対象になるのか」を定めておかなくてはなりません。ここに定められていない行為を従業員がやっても、それを理由とした懲戒処分は原則としてできません。
そこで無断欠勤○日以上、故意または重大な過失で会社に損害を与えた、など、懲戒処分の対象になる行為を定めます。
ただ、起こりうる事象すべてを具体的に記載することは不可能なので、ある程度抽象的な表現でも問題ありません。
また、「その他前各号に準ずる行為のあったとき」という包括的規定も有効です。

・懲戒処分の種類
譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇など、処分の種類を定めます。
どのような処分を設けるかは会社が任意に定めることができます。
しかし、就業規則にあらかじめ定められていない処分を課することはできません。
実際に事案が発生してから、新たな処分を考えるということは許されないのです。

2)懲戒処分と処分の対象となった行為の均衡が取れていること
軽微な違反行為に対して重い処分を課すことは、権利の濫用として無効となります。ただし、軽微な行為であっても、それを繰り返した場合は、重い処分を課すことも可能です。

3)懲戒処分の手続きを遵守すること
就業規則等に懲戒処分を行う際の手続が規定されている場合、それを遵守しなくてはなりません。もしそれを怠った場合、仮に違反行為が重大なものであっても懲戒処分が無効とされる可能性もあるので、要注意です。

 

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2019年03月04日

就業規則の実際(48)~休職(2)

メンタルヘルス障害による休職への対応

休職制度について最近特に問題となっているのは、メンタルヘルス障害を理由に休職した者の復職後の扱いです。
うつ病などのメンタルヘルス障害は完治したか否かの判断が難しく、たとえ復職してもしばらくすると再び休職を余儀なくされるケースが少なくありません。

このような事態を招かないようにするためには、復職時に会社の指定する信頼のおける専門医に診断をさせたうえで、その診断書等をもとに会社が「復職させてもよいのかどうか」を慎重に判断することが大切です。
安易に復職させた結果、病状が悪化したような場合には、安全配慮義務違反に問われるおそれもあるので注意が必要です。

 

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2019年03月04日

就業規則の実際(47)~休職(1)

休職制度とは

休職制度を設ける会社は少なくありません。

休職制度とは、社員を労務に従事させることが不能もしくは不適当な場合に、その社員との労働契約関係を維持しつつ、一定期間、就労を一時的に免除もしくは禁止する措置をいいます。
休職の主な事由として、次のようなものがあげられます。

・私傷病
・公職就任
・他社出向

休職制度は、労働者にとって一定期間解雇が猶予されるというメリットがあります。他方、使用者にとっても労働者が傷病等を被った場合の対応が明確になるという意味で有益な制度といえるでしょう。

 

私傷病休職

休職で一番多いと思われるのが、私傷病による休職です。

休職に入る場合の要件は、次のようになります。
・一定期間(3ヶ月など)病気欠勤した
・医師による診断書が出ており、一定期間の療養を要する旨が書かれている

この「一定期間の病気欠勤」ですが、通常は連続欠勤を指します。
では、断続的な欠勤、つまり出勤と欠勤を繰り返しているような場合はどうするか?
この場合、欠勤日数が累積して一定日数以上に達したら休職とするのがいいでしょう。つまり、出勤日数が連続○日以内の場合は、出勤前後の欠勤を通算するというやり方にするのです。

 

休職期間

休職期間はどのぐらいが適当かは、一概に言えません。
会社の体力などを念頭に、可能な範囲で設定します。
休職事由や勤続年数に対応して設定するのが一般的です。

 

復職

病気休職期間が満了したにもかかわらず病気が治癒していない場合、原職への復帰が困難なこともあるでしょう。

復職は原則として、通常勤務可能な状態に回復することが要件となります。
ただし、判例は「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十分にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易度等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性がると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当」としています。

つまり、原職復帰が不可能な状態だとしても、配置転換が可能であれば、それを実現することによって復職させるべきとしているわけです。

 

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2019年02月28日

就業規則の実際(46)~賃金(7)~賃金の非常時払い、端数計算

賃金の非常時払

賃金は、「一定期日」に、「毎月1回以上」支払えばよいこととされています。
前払いに応じる義務はありません。
しかし、病気など不時の出費が必要になったときは、支払日前であっても、会社は賃金を支払わなければなりません。
これが、「非常時払い」というもので、労働基準法第25条に、次のように定められています。

「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」


「既往の労働に対する賃金」ですから、実際に労務の提供があった分、つまり支払う前までの労働に対する分を支払えば足ります。
もし月給制であれば、支払前までの分を日割計算して支払うことになります。

この非常時払いの対象になるのは、「出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合」です。
「その他厚生労働省令で定める」とは、次のような場合を指します。

 

  • 労働者の収入によって生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合
  • 労働者又はその収入によって生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合
  • 労働者又はその収入によって生計を維持する者がやむを得ない事由により1週間以上にわたつて帰郷する場合

賃金の端数計算

賃金は原則として、全額を支払わなくてはなりません。
所得税など法令で定められたものや、財形貯蓄積立金など労使協定で定めたものを天引きした場合、天引き後の金額を全額支払うのが原則です。

しかし、1円単位まで支払うのは実務的に煩雑なことがあります。
特に、現金で支払う場合は、支払事務も大変です。

そこで、通達で、次のような場合は問題ないとされています。(ただし、就業規則に定めが必要です)

・1ヵ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合、50円未満を切り捨て、50円以上を切り上げる。
・1ヵ月の賃金支払額に生じた1000円未満の端数を翌月に繰り越して支払う。

 

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2019年02月28日

就業規則の実際(45)~賃金(6)~休業手当と平均賃金

休業手当

労働基準法第26条には、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」という規定があります。

これを「休業手当」といいます。

 

使用者の責に帰すべき事由

ここがポイントです。
どこまでが、「使用者の責に帰すべき事由」に該当するのでしょうか?

まず、本人の責に帰すべき事由によるものは除かれます。
私傷病、懲戒処分などによる休業が該当します。
ただし、懲戒処分の場合、休業させる(一般に「出勤停止」といいます)ということが、処分の対象となった行為に比べて重過ぎるような場合は、無効となります。

本人の責に帰すべき事由以外の休業の場合は、不可抗力によるもの以外は「使用者の責に帰すべき事由」になります。
経営不振などで一時休業をする場合なども、「使用者の責に帰すべき事由」になりますので、休業手当の支払が必要です。

 

一部休業の場合

受注量が急減したため、半日だけ操業した場合、会社は、当然のことながら、半日分の賃金を支払わなければなりません。
この場合、休業手当との関係はどうなるのでしょうか?

半日操業ですから、残りの半日分は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」ということになります。
そのため、この日についても、休業手当の支払義務が会社に生じます。
そして、その額は、平均賃金の100分の60と、半日分の賃金との差額となります。

 

平均賃金

平均賃金は、算定事由の発生の日(賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日)から遡って3ヶ月間に支払った賃金の総額を、その期間の総日数で割って算定します。

賃金総額には、残業手当、通勤手当等、その間に支払った賃金すべてが含まれます。
ただし、賞与など3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金や臨時に支払われる賃金は含みません。
また、6か月分の通勤定期券を現物支給した場合は、定期券の額を月割にします。

また、「その期間の総日数」とは、暦日です。



休業手当に関する事項も必ず就業規則に定めるようにします。
記載がない場合、休業の場合でも賃金の全額支払いを求められるリスクが発生しますので要注意です。

 

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2019年02月27日
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